2025年10月10日ピースウィンズと米日財団 アメリカの対外援助の大幅削減と今後の日米協力関係に関する報告書を発表# News
この度、ピースウィンズ・アメリカと米日財団は共同で『米国の対外援助削減 日米協力に与える影響』の報告書をまとめました。
報告書では、トランプ政権の対外援助政策の転換(USAIDの解体など)により世界の何百万もの人々の生命と生活が危険にさらされるだけではなく、これまでに構築された開発援助システムを不安定にし、さらに日米開発協力の将来に広範な影響を及ぼすことが、実例とともに分析されています。
ぜひ多くの方に報告書をご覧いただき、ご一緒に考えていっていただければ幸いです。
『米国の対外援助削減 日米協力に与える影響』(PDF)
『America’s Foreign Aid Retrenchment Implications for US-Japan Cooperation』(PDF)
報告書の概要
2025年の米国の対外援助政策の転換は何百万もの人々の生命と生活を危険に晒し、世界の開発援助システムを不安定にし、日米開発協力の将来に広範な影響を及ぼしています。
直接的影響
概算では2025会計年度の米国対外援助事業の3分の2が終了となり、これは米国対外援助総額の約半分に相当します。新年度に向けてトランプ政権は対外援助費の84%削減を提案。USAID(米国国際開発庁)が解体され、国連への拠出金も減額された影響で、世界各地の難民キャンプの食料事情や生活環境は急速に悪化し、7月時点ですでに375,000人もの人びとが死亡した可能性があります。2030年までにさらに1,400万人が死亡するとの予測もあります。
間接的影響
アフガニスタンや南スーダンなどで難民キャンプまでの長く危険な移動を支えてきた国連人道航空サービスの維持が困難になるなど、ロジスティクスが失われることにより、日本を含む各国と現地NGOの任務遂行が非常に困難になっています。その他にも、安全保障、情報収集、組織間調整など開発エコシステムが崩壊の危機に瀕しています。「人間の安全保障」の概念が示す通り、紛争・貧困・環境破壊・感染症など脆弱な人々が直面する課題は本質的に繋がっており、全体的な支援が行われなければ人々の尊厳を守ることはできません。
空白が生まれることの危険
開発・人道支援を戦略的に行うことで、米国は民主的統治や透明性の確保、ジェンダー平等の推進などを進めてきましたが、米国のリーダーシップの消失により、権威主義的国家が米国の圧力から自由になりました。すでに太平洋諸国やバングラデシュ、カンボジアなどで一帯一路政策を強力に推し進める中国がアメリカの空白を埋めようとしています。
日本にとっての意味
こうした傾向が続けば、デジタルインフラを始め、今後数十年にわたって影響が続く様々なルール形成において中国が主導権を握ることになり、日本がそのビジョンを追求することは難しくなり、日本企業にとってもビジネス環境は非常に厳しいものとなります。ただ、アメリカの関与が低減する中、日本がODAを維持するか増額すれば、日本のリーダーシップが通常以上に響き渡る好機でもあります。今こそ、対外支援の拡充は日本にとって賢明な投資なのです。
ジェームス・ギャノン / James Gannon
ピースウィンズ・アメリカ代表 / the Chief Executive Officer, Peace Winds America
略歴
ジェイコブ・スレジンジャー / Jacob M. Schlesinger
米日財団代表理事 / President and CEO, the United States-Japan Foundation(USJF))
略歴