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社会課題への関心が高まる中、社員の社会貢献活動を支援する「ボランティア休暇制度」も注目されています。
大企業を中心に導入が進むこの制度は、CSR(企業の社会的責任)や人的資本経営の観点からも重要性がますます高まっています。社員が安心して活動に参加できる環境を整えることは、企業文化の成熟にもつながるでしょう。
本記事では、ボランティア休暇制度の基本的な仕組みや導入のポイント、企業事例などを解説します。
ボランティア休暇が注目される背景

近年、社会貢献を「個人の善意」だけに委ねず、「企業の制度」として推進する動きが広がっています。その一つが、社員のボランティア参加を後押しする「ボランティア休暇」です。
多様化する働き方と社会貢献の両立
働き方改革を背景に、社員が社会貢献活動に参加しやすい環境づくりが進んでいます。
日本では、1995年の阪神・淡路大震災を契機にボランティア活動への関心が高まり、企業でも制度化の動きが始まりました。その後、2011年の東日本大震災を機に、企業が社員のボランティア活動を支援する動きがさらに広がり、制度整備の重要性が再認識されました。
ボランティア休暇制度の2022年度における導入率は6.5%にとどまるものの、大企業を中心に関心が高まっています。リモートワークなど柔軟な働き方が浸透し、「働くこと」と「社会に関わること」の両立を支える手段として改めて注目を集めています。
参考:「ボランティア休暇制度を導入しましょう」(厚生労働省)
人的資本経営・ESG経営の観点
社員ボランティア活動は、人的資本投資の一環として位置付けられています。
ボランティア休暇制度の導入により、社員が社会課題の現場に触れる機会が生まれ、企業理念の理解やリーダーシップ醸成にもつながります。
また、ESG(環境・社会・企業統治への配慮)を重視する経営においても、社会的価値創出に貢献する制度として注目されています。ESG経営については以下もご参照ください。
こうした背景から、ボランティア休暇制度は単なるCSR施策ではなく、人材育成や企業価値向上につながる経営施策として捉えられるようになっています。
社会課題への関心の高まりと企業の責任
地域課題や災害支援、子ども・高齢者支援など、企業が関わることのできる社会的テーマは拡大しています。
社会全体が、地域や周囲の人びとと助け合う「共助」を重視する傾向にあり、企業が社員の社会参加を促すことは、信頼される組織づくりにも直結します。また、実際に現場へ社員を送り出す取り組みは、社会貢献を具体的な行動で示す手段として有効です。
このように、ボランティア休暇制度は「社会の要請」と「企業の成長」の双方に応える施策といえるでしょう。
ボランティア休暇制度の基本と仕組み

ボランティア休暇を効果的に運用するには、制度の基本的な枠組みを理解することが重要です。
以下、給与の扱いや対象範囲など、押さえるべき要点を解説します。
ボランティア休暇の定義と制度の概要
ボランティア休暇は、地域貢献や災害支援など、社会的意義のある活動のために取得できる特別休暇です。
導入する際は、就業規則への明記や申請手続きの整備が必要です。活動日数は企業が判断でき、年数日程度とする企業が多く見られます。
こうした制度を整えることで、社員が安心して活動に参加できる環境が生まれます。
有給・無給の違いと年次有給休暇との関係
ボランティア休暇は、有給または無給で設定できます。2022年度の調査によると、導入企業の85.2%が有給、13.6%が無給としています。

有給とすれば社員の参加ハードルが下がる一方、無給でも制度として明文化することで、社員が活動に参加しやすくなる効果があります。給与の扱いは、企業の方針や予算、期待する制度の活用度などを踏まえて決定されます。
ボランティア休暇は、年次有給休暇とは別に企業が任意で設ける特別休暇です。年次有給休暇は労働基準法で定められた法定休暇であるのに対し、ボランティア休暇は企業が独自に設計できる休暇制度です。そのため、活動の対象範囲や取得条件、日数などを企業の判断で柔軟に設定できます。
また、消化しきれなかった年次有給休暇を積み立てる「積立有給休暇」と組み合わせることで、長期のボランティア活動を支援している企業もあります。
このように、既存の休暇制度との関係性や使い分けを明確にしておくことが、円滑な制度運用につながります。
活動の対象範囲と申請手続きの整備
ボランティア休暇の対象となる活動範囲は、企業が明確に定める必要があります。厚生労働省の就業規則記載例では、地域貢献、社会貢献、自然・環境保護、災害復興支援の4分野が例示されています。
申請手続きは、事前に所定の様式で申請し承認を得る形が一般的で、活動後は報告を求めることが通常です。
活動の対象範囲や手続きを明確にすることで、社員が制度を利用しやすくなります。
ボランティア休暇導入のメリット

ボランティア休暇制度の導入は、社員の成長を促すとともに、企業ブランド力の向上、人材の定着、エンゲージメント強化といった組織力の活性化にもつながります。
ここでは、制度として整備することで得られる効果に焦点を当てて解説します。なお、社員ボランティア全般のメリットについては以下の記事もご参照ください。
社員の主体性と成長の促進
企業が制度として支援すれば、社員の行動は一時的な善意ではなく、継続的な学びの機会へと変わります。制度があることで、社員は安心して活動に参加できます。
社会の課題や多様な立場に触れる経験を通じて、社員には次のような成長が期待できます。
・社会的視野の拡大と共感力の向上
・状況に応じて判断・行動する力の育成
・組織を越えた協働・調整力の強化
こうした経験は、日常業務では得難い学びとなり、社員の成長を後押しします。
企業ブランド力・社会的信頼性の向上
ボランティア休暇の整備は、企業の社会的責任を示す取り組みです。投資家や求職者をはじめとする社会に対して、社員の社会参加を支援する姿勢が伝わり、企業の信頼性向上につながります。
CSRやESG経営の観点からも、こうした制度を持つ企業は社会から評価されやすくなります。
採用力強化と人材定着の促進
社会貢献を支援する企業文化は、求職者にとって応募時の魅力となり、特に若手を中心に共感を得やすい要素です。
また、社員が社会貢献活動で得た経験を社内で共有すれば、組織への帰属意識も強まります。
制度の整備により、社員は会社に支援されていると実感でき、モチベーションの向上にも寄与します。
ボランティア休暇の導入と運用のポイント

ボランティア休暇を効果的に導入・運用するには、準備段階から実施後の改善まで、段階的に取り組むことが重要です。
ここでは、実務担当者が押さえるべき要点を解説します。
導入前の準備と社員ニーズの把握
制度設計の第一歩は、自社の状況と社員のニーズを正確に把握することです。
アンケートや面談を通じて「どのような活動に関心があるか」「どの程度の休暇日数が必要か」などを明確にすれば、実効性のある制度の方向性が見えてきます。
同時に、導入による課題も想定しておく必要があります。有給とする場合の人件費負担、業務調整による他の社員への負担、制度の運用・管理にかかる手間などを踏まえ、自社の規模や体制に合った設計を検討します。
また、既存の年次有給休暇や特別休暇と矛盾や重複が生じないよう確認します。導入の目的を「社会貢献」「人材育成」「地域との関係構築」など明確にしておくことで、その後の運用がぶれにくくなります。
制度設計と就業規則への明記
休暇日数・活動の対象範囲・申請方法などを具体的に設計します。
年間数日を上限とする有給制度や、災害支援など特定の活動に限定した制度など、企業の方針や業務形態に応じた設計が求められます。
制度内容は就業規則に明記し、社内イントラネットなどで周知すると、社員が利用しやすい環境を整えられます。申請書式や承認フローもあらかじめ定めておけば、運用開始後の混乱を防げます。
また、業務への影響を最小限にするため、「繁忙期は取得を控える」「活動の1ヶ月前までに申請する」といった運用ルールを定めておくことも重要です。活動の対象範囲についても、「報酬を得る活動は対象外」など判断基準を示しておくと、申請時のトラブルを減らせます。
社内理解の促進と管理職の関与
制度を形だけで終わらせないためには、経営層や管理職の理解と協力が欠かせません。
管理職自らが活動に参加したり、部下の参加を後押ししたりすることで、制度が企業文化として根付きやすくなります。
社内報やイントラネットで活動事例を紹介したり、参加者の体験談を共有したりすることも、社員の関心を高める有効な手段です。制度の意義を繰り返し発信することで、「利用しづらい雰囲気」を払拭できます。
活動先との連携と安全管理
ボランティア活動にはリスクも伴います。特に災害支援や屋外活動では、事前の安全確認や保険加入が必要です。
また、信頼できる非営利団体や自治体と連携することで、安全に配慮された活動先を選べます。
運用開始後の振り返りと改善
活動後は、社員からの報告を受けて活動の成果や課題を確認し、制度の改善点を検討します。
「日数が足りない」「申請手続きが煩雑」といった声があれば、柔軟に見直すことが継続運用の鍵です。
改善サイクルを組み込むことで、制度が形骸化せず、実効性を保ち続けられます。
ボランティア休暇導入企業の事例

ボランティア休暇制度は、企業規模によって設計や運用に違いが見られます。
ここでは、大企業と中小企業それぞれの特徴を紹介します。
大企業における制度化と継続運用
2020年度の調査によると、従業員数1,000人以上の企業でボランティア休暇の導入率が高く、制度として確立している傾向があります。
参考:「この経験がきっと力になる」(厚生労働省)
具体的には、年数日程度で設定する企業が多く、東京ガス株式会社やソフトバンク株式会社など業種を問わず導入が進んでいます。たとえば株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、グループ主要会社で年5日の制度を導入し、2024年度は79人が利用しました。
参考:社会貢献活動(株式会社セブン&アイ・ホールディングス)
大企業の制度運用では、積立有給休暇と組み合わせることで長期のボランティア活動を支援する事例も見られます。数ヶ月から1〜2年程度の長期休暇を設ける企業もあり、海外でのボランティア活動などを想定した制度です。
また、活動実績を開示したり、CSR活動の一環として位置付けたりするなど、社会貢献を企業文化として根付かせる取り組みが広がっています。
中小企業における柔軟な運用
中小企業では、企業規模に応じた実効性のある制度設計が求められます。2020年度の調査によると、企業規模が大きくなるほど導入率は高まる傾向があります。
導入企業では、独自の工夫を凝らした制度が見られます。
アミタホールディングス株式会社(環境コンサルティング)は、「ソーシャル・タイム」として年20日の有給休暇を付与しています。非営利団体(NPO・NGO)の活動への参加や地域活動など、幅広い社会貢献活動を支援する制度です。
株式会社アイジーコンサルティング(住宅関連事業)は、東日本大震災をきっかけに災害ボランティア休暇を導入しました。現在は最大で年7日の特別休暇を取得可能です。
中小企業では、組織規模に合わせた柔軟な運用が特徴です。導入済みで利用実績がない企業もありますが、制度を整えることが社員の安心につながります。
参考:特別な休暇制度導入事例(厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト)
まとめ
ボランティア休暇制度は、社員が社会と関わりながら成長できる環境を整える取り組みです。制度の導入は、企業の社会的信頼性の向上だけでなく、組織の活力や人材定着にもつながります。まずは自社の体制に合った仕組みから始め、継続的に運用・改善していく姿勢が重要です。
社会課題の解決や被災地支援に取り組む団体と連携することで、活動の幅はさらに広がります。ピースウィンズ・ジャパンでは、企業と協働した社員ボランティアの受け入れも行っています。過去の連携事例やお問い合わせについては、以下をご覧ください。





