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2026年2月2日
コラム
企業が進める社員ボランティアの効果と実践法
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社会課題の多様化が進み、企業が果たす社会的役割はますます重要になっています。

中でも近年注目されているのが、社員一人一人が社会貢献活動に参加する「社員ボランティア」です。寄付や協賛といった従来の支援にとどまらず、社員自身が現場で行動することで、企業と地域社会の距離を近づける活動として関心が高まっています。

本記事では、社員ボランティアの概要や企業にもたらす効果、企業が導入する際のポイントなどについて解説します。

社員ボランティアが注目される背景と意義

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社員ボランティアは、社員が自主的に社会貢献活動に参加する仕組みです。企業はその活動を制度的に支援し、推進する役割を担います。

かつて企業の社会貢献といえば寄付などが中心でしたが、そうした支援に加え、社員が自ら行動する形も増えてきました。活動分野は、環境、教育、地域貢献、災害支援などさまざまです。近年では、専門的な知識やスキルを提供する「プロボノ」と呼ばれる社会貢献活動の導入も進んでいます。

日本では、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、後に「ボランティア元年」と呼ばれるほど市民のボランティア活動が活発化し、企業による社員ボランティアの支援も広がりました。その後、2011年の東日本大震災では多くの企業が社員の被災地支援を後押しし、現在も社会貢献の重要な形として注目されています。

現場での活動は、社員にとって自社の理念や事業の意義を再確認する機会となります。企業においても、社員ボランティアをCSR(企業の社会的責任)やサステナビリティ経営の一環として位置付ける傾向が見られます。

このような動きは大企業に限らず中小企業にも広がり、社員の成長や組織の活性化を促す「企業と社会の双方に利益をもたらす活動」として注目を集めています。

社員ボランティア導入のメリット

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社員ボランティアは、社会貢献の枠を超えて、社員の意欲向上や組織の活性化にも寄与します。社員と企業それぞれの視点から、主なメリットを見ていきましょう。

社員にとってのメリット

ボランティア活動への参加は、日常業務では得難い経験や気づきをもたらし、仕事への姿勢や人との関わり方にも良い影響を与えます。

・視野の拡大と価値観の変化

社会課題の現場や地域での活動に触れることで、社会全体の仕組みや多様な人々の立場を理解する助けになります。自身の仕事が社会の中でどのように役立っているかを見つめ直す機会にもなるでしょう。

・コミュニケーション力・協働力の向上

異なる世代や職種の人と協力し合う中で、対話力やチームワークが自然に磨かれます。社内でも部署や肩書の垣根を越えた関係づくりが生まれ、互いを理解し合うきっかけにもなります。

・自己成長とモチベーションの高まり

課題解決に主体的に関わる体験は、達成感や自信を育み、日々の業務への前向きな姿勢や意欲の向上にもつながります。

こうした経験は、「良いことをした」という満足感を超えて、「社会と自分の仕事をつなげて考える力」を育てる契機となります。

企業にとってのメリット

企業にとっても、社員の成長や組織の活性化、社会的信頼の向上など、多方面でプラスの効果が期待できます。

・社員の主体性と組織の一体感の醸成

活動を通じて、社員が自発的に考え行動する姿勢を身に付けることで、職場全体の活力が高まります。部門を越えたつながりが生まれ、組織の一体感も強まります。

・企業ブランド力と社会的信頼の向上

継続的な社員ボランティア活動は、顧客や地域社会からの評価につながります。単なるイメージアップにとどまらず、「信頼できる企業」としての認知を高める効果があります。

・ESG・SDGsへの貢献

社員のボランティア活動は、ESG(環境・社会・企業統治への配慮)やSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みとして評価される傾向にあります。また、社員が社会課題に向き合う姿勢を示すことは、企業の社会的価値を具体的に伝える手段にもなります。ESGやSDGsについては以下もご参照ください。

企業の社会貢献はなぜ必要なのか? ESG・CSR・SDGsの違いと経営に効く理由

・人材定着と採用力強化

社会的意義を感じながら働ける環境は、社員の定着率を高めるとともに、採用活動でも企業の魅力を伝える要素となります。

社員ボランティアは企業にとって、人材育成と社会的信頼の向上を同時に実現する、多面的な価値を持つ施策といえます。

社員ボランティア導入時の課題や注意点

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社員ボランティアの活動を支援・促進するには、制度設計などの実務的な準備と、社内理解を深める働きかけが欠かせません。

意義は理解されやすい一方で、運用面では工夫が必要なため、社員が参加しやすい環境づくりが重要です。

活動スタイルと制度設計のバランス

社員ボランティアの活動を推進する上でまず重要なのは、「どのような形で参加してもらうか」を明確にすることです。

勤務時間内に行うのか、休日を利用するのか、あるいはどちらも可能とするのかによって、社内調整や労務管理の方法が変わります。

制度面では「ボランティア休暇」を設ける企業もあります。年数日程度の短期休暇から、数ヶ月以上の長期休暇を認める例まで、企業によって設計はさまざまです。ただし、全員に参加を求めると負担や抵抗感が生まれる場合もあります。

社員の自主性を尊重しながら、無理なく参加できる環境を整えることが継続の鍵です。また、活動を単発で終わらせず、年度ごとにテーマを設定したり社内報などで共有したりと、継続して実施できる仕組みづくりも重要です。

活動先の選定と安全への配慮

ボランティア先の選定も大切なステップです。社会的意義や活動内容だけでなく、受け入れ体制や安全性を十分に確認する必要があります。

特に災害支援や屋外活動などリスクを伴う分野では、社員への事前説明や保険加入など、企業側の備えが必要です。

また、社員のスキルや関心に合った活動を選ぶこともポイントです。「どの団体や地域を支援するか」のみならず、「社員がどのような形で関わるか」を意識することで、活動への納得感や満足度が高まりやすくなります。

信頼できる非営利団体や自治体と連携し、双方にとって無理のない形をつくることが、長期的なパートナーシップの基盤となります。

成果の「見える化」と社内共有の工夫

ボランティア活動の成果は、数値で測ることが難しいものです。そのため、「どのように評価し、社内へ伝えるか」をあらかじめ考えておく必要があります。

たとえば、活動後に社員が感じたことを共有する報告会を開く、体験談を社内報や社外広報に掲載するなど、「見えにくい成果を可視化する仕組み」が有効です。活動の目的や成果を言語化すれば、参加していない社員にも意義が伝わり、次の参加につながります。

また、経営層や管理職が活動に理解を示し、メッセージを発信したり自ら参加したりすれば、活動が一時的な施策ではなく、企業文化として定着しやすくなります。

社員ボランティア活動を進めるステップ

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社員ボランティアの活動を継続的に推進するには、理念を形にする仕組みの構築が欠かせません。

以下、4つのステップで紹介します。

ステップ1:目的を明確にする

最初のステップは、「なぜ行うのか」を整理することです。社会貢献を基本に据えつつ、社員の成長やチームづくりなど、どの側面を重視するかによって、活動の方向性やパートナー選定が変わります。

目的が曖昧なまま始めてしまうと、社内での理解が得られず、成果も実感しにくくなります。企業の理念や事業との結びつきを明確にすれば、社員も納得して参加しやすくなるでしょう。

「地域社会の一員として貢献する」「専門スキルを社会に還元する」など、自社らしい目標を言葉にして共有することが大切です。

ステップ2:制度と運営体制を整える

次に、活動を支える制度や運営体制を整備します。ボランティア休暇を設けたり、活動時間を勤務時間の一部として認めたりするケースがあります。

また、担当部署(人事・総務・CSR部門など)を明確にし、社員からの相談窓口を設けると、参加への心理的ハードルを下げられます。

社内周知の際には、単なる制度告知ではなく、「どんな活動があるのか」「どのように参加できるのか」を具体的に伝えることがポイントです。

短時間で参加できる活動など、多様な選択肢を用意すると、参加率の向上につながります。

ステップ3:信頼できる活動先と連携する

活動を円滑に進めるには、受け入れ先との連携が欠かせません。現場の課題や求められる支援内容を把握し、社員が安心して参加できる環境を整えている活動先を選びましょう。

活動先には、NPO、NGO、公益法人、自治体、教育機関、地域団体などがあります。重要なのは、企業の方針に合い、長期的に協力関係を築ける相手を見極める点です。双方が無理なく協働できる関係を構築すれば、活動を長く続けやすくなります。

こうした連携を通じて、社員が社会課題の現場を自らの目で確かめ、協働の中で得た知見をその後の連携や社内の取り組みに反映していくことが期待できます。

ステップ4:活動を継続・発展させる

一度の活動で終わらせず、継続することで、初めて社内文化として定着します。そのためには、参加した社員の気づきや成果を共有し、次の活動に活かす仕組みを整えることが重要です。

活動後は、社員の体験や感想を報告会で共有したり、社内報や公式SNS・広報媒体で紹介したりすることで、次の参加意欲を高められます。また、活動を振り返りながら改善点を話し合えば、社員の主体性が育ち、より実効性のある活動へと発展します。

継続的な活動が、企業と社会の信頼関係を深め、社員ボランティアの活動を企業全体に根付かせます。

社員ボランティアの主な分野と実践例

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社員ボランティアは、企業の特色に応じて、さまざまな分野で展開されています。ここでは、代表的な活動分野と、非営利団体との協働事例を紹介します。

主な活動分野と取り組みの傾向

社員ボランティアは、環境・教育・地域・災害など、多様な分野で実施されています。

・環境分野:

河川や海岸の清掃、植樹などによる自然環境の保全に加え、子ども向けの環境教室やリサイクル啓発など、環境教育も広がっています。

・教育・人材育成分野:

学校での出前授業やキャリア講座のほか、社会人や地域住民を対象としたスキル講習など、世代を問わず学びを支援する活動が行われています。

・地域貢献・福祉支援分野:

地域イベントへの協力や地域清掃、福祉施設での交流など、地域に根差した活動を通じて、住民との信頼関係を深めています。

・災害支援分野:

被災地での物資整理や避難所支援など、災害後の復旧・復興を支える活動に社員がボランティアとして参加する例も見られます。

こうした活動は、社員が社会課題を「自分ごと」として捉え、企業と社会のつながりを強める契機にもなっています。

なお、現地での支援活動に加え、専門スキルを活かすプロボノ型の活動も進んでおり、活動方法の多様化が企業の社会貢献の可能性をさらに広げています。

➤参考:「企業が進める社員のボランティア活動に関する事例集」(東京都生活文化局)

非営利団体との協働による実践例

社員ボランティアは、NPOやNGOなどの非営利団体との連携によっても、より効果的に社会貢献できます。

災害緊急支援や地域の復興支援などを行う認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでも、企業と協働して社員ボランティアを受け入れています。

2024年の能登半島地震では、住友三井オートサービス株式会社(SMAS)の社員が延べ117人、石川県珠洲市で約1ヶ月にわたり支援活動に参加しました。ピースウィンズ・ジャパンが運営する「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」と連携し、仮設住宅への家電配付や避難者支援など、被災地の生活再建を支えました。

参加した社員からは、現地でしか得られない学びや、被災地の現実を目の当たりにした実感、今後も能登を忘れず支援を続けたいという声が寄せられました。こうした経験が、参加者の社会課題への理解を深め、今後の社会貢献活動への意欲につながったと考えられます。

【企業連携】タスキを繋いだ1ヶ月 珠洲でのSMAS社員ボランティア

まとめ

社員ボランティアは、社会課題の解決に貢献するとともに、社員の成長や組織の活性化を促す活動です。一人一人の経験を企業の活動に反映させることで、持続可能な社会を支える力が育まれます。活動を通じて培われたつながりは、企業と社会の信頼関係をより強固なものにしていくでしょう。

ピースウィンズ・ジャパンでは、社員ボランティアの受け入れを含め、さまざまな形で企業との連携を進めています。過去の連携事例やお問い合わせについては、以下をご覧ください。

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