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2025年11月10日
コラム
CSRとは?基本的な意味や取り組むメリット、活動の具体例を解説
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CSRとは、企業が利益を上げるだけでなく、環境保護や地域社会への貢献など、社会全体への責任を意識しながら事業を行う考え方です。

現代の企業経営では、「売上拡大」と「社会貢献」の両立が、企業価値を高める重要な戦略となっています。

この記事では、CSRがなぜ現代の企業にとって不可欠なのか、その基本的な考え方から具体的な活動例まで分かりやすく解説します。NPOとの連携による寄付活動など、企業が取り組みやすい社会貢献の手法も紹介しますので、CSRの取り組みを検討している企業の方はぜひ参考にしてください。

CSRとは何か?基本的な意味と定義

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CSRに取り組むには、まず基本的な意味や定義を正しく理解することが大切です。CSRの概念は、社会的責任に関する国際規格「ISO26000」に示される7つの原則と併せて理解すると、より実践的な活動につなげやすくなります。

また、サステナビリティやESGといった関連する概念との違いを押さえておくと、企業の戦略立案にも役立ちます。

CSRの基本定義

CSRは「企業の社会的責任」を意味する「Corporate Social Responsibility」の略です。厚生労働省では、以下のように定義しています。

「CSRとは、企業活動において、社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方」

参照:厚生労働省|CSR(企業の社会的責任)

つまり、企業に対し、単なる利益追求から社会との共生を重視する経営への転換を促す考え方です。

CSRの7つの原則

ISO(国際標準化機構)が2010年に発行した国際規格「ISO26000」では、CSR活動で重要な7つの原則が示されています。

1. 説明責任:自社の活動が社会に与える影響を十分に説明する

2. 透明性:活動の内容や意思決定過程を明確に示す

3. 倫理的な行動:社会的・道徳的に適切な行動をとる

4. ステークホルダーの利害の尊重:従業員や顧客、地域社会など関係者の利益に配慮する

5. 法の支配の尊重:関連法令や規制を順守する

6. 国際行動規範の尊重:国際的な基準や行動規範に沿った運営を行う

7. 人権の尊重:人権の尊重を企業活動方針の基本とする

これらの原則は、単なる法令順守にとどまらず、幅広い利害関係者に対する責任、透明性、倫理性を確保する重要性を示しています。

参考:日本経済団体連合会|日本経団連タイムス No.3012

似た言葉との比較

CSRには、混同しやすい類似の概念、言葉が存在します。それぞれの定義や基本的な位置付けを確認し、CSRとの相違点を整理してみましょう。

・コンプライアンス

コンプライアンス(Compliance:法令順守)は、企業が法令・規範・社内規定などを守り、法的ペナルティや社会的批判を回避する取り組みを指します。

CSRとの違いは「任意か必須か」にあります。CSRは自主的に行う社会的責任であるのに対し、コンプライアンスは法や制度、社会規範に則り求められる最低限の義務です。

・サステナビリティ

サステナビリティ(Sustainability:持続可能性)は、環境・社会・経済の3側面をバランスよく維持し、将来世代にわたって持続可能な発展を実現することを意味します。

CSRとの違いは「対象となる領域や視野の広さ」にあります。CSRは企業活動における社会的責任の実践を指すのに対し、サステナビリティは社会全体や地球規模の長期的存続を見据えた包括的概念です。

・SDGs

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2030年までに世界全体での達成を目指して、国連が定めた17の国際目標です。

CSRとの違いは「責任か目標か」にあります。CSRは企業が果たすべき社会的責任を意味するのに対し、SDGsは国際社会全体の共通目標です。企業には、CSRの一環としてSDGsに貢献することが求められます。

・ESG

ESG(Environment Social Governance:環境・社会・企業統治)は、投資家が企業を評価する際に考慮する3つの観点を指します。

CSRとの違いは「企業活動か評価基準か」にあります。CSRが企業の主体的な取り組みであるのに対し、ESGは投資家が企業の持続可能性やリスク管理を測るための判断基準です。

・SRI

SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)は、財務的リターンに加えて社会的・環境的インパクトも重視する投資手法です。

CSRとの違いは「主体の違い」にあります。CSRは企業が主体となる行動を示すのに対し、SRIは投資家が主体となる責任ある投資行動を指します。

・CSV

CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)は、企業が社会課題の解決と経済的利益の獲得を同時に追求する経営戦略です。

CSRとの違いは「経済的利益への姿勢」にあります。CSRは企業の社会的責任を果たすこと自体に焦点を当てているのに対し、CSVはその取り組みを新たな利益創出の源泉とみなし、事業戦略に組み込む点が特徴です。

CSRに取り組むメリットとデメリット

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CSRへの取り組みには、メリット・デメリットの両面があります。本章では、企業価値や社会との関係の観点から、具体的なポイントを解説します。

CSR取り組みのメリット

CSRに取り組むことで、企業は多くのメリットを享受できます。ここでは、企業価値向上と社会との関係改善の2つの観点で整理します。

【企業価値向上のメリット】

・ブランドイメージ・企業信頼度の向上

顧客や取引先、投資家など幅広いステークホルダーからの信頼が高まり、企業全体のブランド力と長期的なビジネスの安定につながります。

・優秀な人材の確保と従業員エンゲージメントの向上

社員のモチベーションや定着率が向上し、採用競争力も高まります。

・投資家からの評価の向上

持続可能性を意識した経営は投資家に高く評価され、資金調達の選択肢が広がります。

・リスクマネジメント効果

社会的責任を果たすことで、法令違反や社会的批判によるリスクを低減できます。

・新市場開拓・イノベーション創出のきっかけ

社会課題に対応する中で、新たな商品・サービスや市場機会の発見につながります。

【社会との関係改善のメリット】

・地域社会との良好な関係構築

地域イベントや社会貢献活動を通じて、企業と地域の信頼関係を強化できます。

・顧客ロイヤルティなどの向上

社会貢献や環境配慮の姿勢に共感した消費者がファンとなり、リピート購入や長期的な関係強化につながります。

・サプライチェーン全体の最適化

取引先や協力企業との信頼関係を強化し、持続可能な取り組みをともに進めることで、効率的かつ安定した供給体制を確保できます。

CSRの課題・デメリットと対策

CSRに取り組む際には、いくつかの課題やデメリットも考慮する必要があります。しかし、適切な対策を講じることで課題は克服可能です。

【デメリットと対策】

・コスト、リソース負担

CSRを短期的な視点で捉えると、資金や人材、時間などの初期のリソースの負担が重く感じられる可能性があります。将来的なブランド価値向上や新市場開拓などにつなげるには、長期的な投資回収の視点で取り組みを設計することが重要です。

・効果測定の難しさ

CSR活動には利益のような分かりやすい指標がないため、取り組みの評価が難しく、「やりっぱなし」になるリスクがあります。事前に活動の目標とそれに応じたKPI(重要業績評価指標)をしっかりと設定し、定期的な評価の仕組みを導入することで、取り組みの成果を可視化できます。

・社内理解の不足

CSR活動の意義や必要性が社内で理解されないと、全社的な取り組みへの機運が高まらず、メリットも薄れてしまいます。経営層のコミットメントと社員教育を組み合わせることで意識改革を促し、社内の理解と協力を得ることが大事です。

・短期的利益への影響

CSR活動は、短期的には収益にマイナスの影響をもたらす可能性があり、短期的な利益を重視するステークホルダーの理解を得られにくい面があります。丁寧な対話を通じ、CSR活動の中長期的価値を社内外に説明することが重要です。

社会的潮流による後押し

近年、CSRへの取り組みはますます重要性を増しています。以下の社会的潮流(トレンド)を踏まえると、課題以上にメリットが大きいことが分かります。

・ESG投資の急成長

世界的に、投資家が持続可能性を重視する傾向が強まっています。CSR活動の充実は、資金調達の選択肢を広げます。

・若年世代などの価値観の変化

社会貢献や環境配慮を重視する消費者や人材が増えており、とくに若年世代で顕著です。社会貢献に積極的に取り組むことで「選ばれやすい」企業となり、事業や採用活動に良い影響をもたらします。

・法規制の強化傾向

国内外で、企業の社会的責任に関する法的枠組みの整備が進んでいます。

CSR活動の具体例と実践方法

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CSR活動にはさまざまな手段があり、自社の理念や事業特性に合わせて検討することが大事です。ここでは、代表的な取り組み例とその実施方法を紹介します。

環境分野での取り組み

省エネルギーの推進やリサイクルの促進、再生可能エネルギーの導入など、環境負荷を軽減する活動です。企業のブランド価値向上や環境規制対応にもつながります。

・脱炭素経営・再生可能エネルギーの導入

温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの活用により、持続可能な社会づくりに貢献します。

・廃棄物削減・循環型経済への貢献

資源の再利用や廃棄物の削減を進めることで、環境負荷の低減に寄与します。

・生物多様性の保全活動

自然環境や生態系保護の取り組みによって、持続可能な社会基盤を支えます。

・環境技術の研究開発

環境負荷を低減する製品やサービスの開発に取り組み、社会課題の解決と事業成長を両立させます。

社会分野での取り組み

働きやすい職場環境の整備、ダイバーシティ推進、地域社会との連携など、人や地域に配慮した活動です。従業員満足度の向上や地域との信頼関係強化に大きな効果があります。

・従業員関連(働き方改革、ダイバーシティ推進、人材育成)

社員が働きやすく成長できる環境づくりを進めることで、企業全体の活力向上につながります。

・地域社会貢献(教育支援、インフラ整備協力、災害支援)

地域課題の解決に取り組むことで、地域との信頼性を築き、社会価値の創出に寄与します。

・人権・公正な労働(サプライチェーンでの人権配慮)

公正な労働慣行を守り、取引先や社会からの信頼を確保します。人権や労働者の保護に適切に取り組んでいる企業を取引先に選ぶなど、サプライチェーン全体での人権配慮の動きも広がっています。

寄付・協働による社会貢献活動

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CSR活動の一環として、寄付や外部団体との協働を通じた社会貢献も重要です。自社だけでは解決が難しい課題に対して、専門性を持つ団体と連携することで効果的な取り組みが可能になります。

・NPO・NGOへの寄付支援

社会課題の解決に取り組む団体へ寄付することで、専門的な活動を資金面から後押しできます。自社の理念や事業領域と関連する分野を選べば、より一貫性のある社会貢献につながります。

・ボランティア・プロボノ活動支援

従業員が自主的に参加するボランティア活動や、専門知識・スキルを活かしてNPOや地域活動を支援するプロボノ活動を後押しするのも選択肢のひとつです。社員の社会貢献意識を高めつつ、専門性を活かした効果的な支援が可能になります。

・社会的企業との協働

社会課題の解決を目的に事業活動を行う社会的企業と連携することも有効です。環境配慮や地域支援などをビジネスの仕組みに取り組み、ともに課題解決を進められます。

なかでも比較的取り組みやすく、効果が見えやすいのが寄付支援です。自社の強みや事業内容に沿った団体への寄付は、社会課題の解決に貢献しつつ、企業価値の向上にもつながります。寄付支援には、以下のようなメリットがあります。

【寄付の具体的メリット】

・ブランドイメージの向上やPR効果

寄付を通じた社会貢献活動は、顧客や取引先に対する信頼向上につながります。また、メディアやSNSを通じたPR効果も期待できます。

・税制優遇の活用

寄付金控除などの税制優遇を活用することで、企業負担を軽減しながら社会貢献できます。

・社員エンゲージメントの向上と採用競争力の強化

寄付活動を通じて、社員の社会貢献意識や企業への帰属意識が高まります。CSRに積極的な企業は採用市場でも注目され、優秀な人材確保にもつながります。

企業の寄付活動について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。

企業寄付とは?税制優遇の仕組みやメリット、注意点を解説

また、寄付を含む企業の社会貢献活動や事例については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

企業ができる「社会貢献」とは? メリットや事例をご紹介

まとめ

CSRへの取り組みは、企業価値の向上だけでなく、社会課題の解決や持続可能な経営への転換にもつながります。企業には、自社の事業特性やリソースを活かしつつ、環境や社会分野、寄付・協働による社会貢献など多様な取り組みを検討することが求められます。

自社が直接行うCSR活動に加えて、NPOやNGOへの寄付、ボランティア・プロボノ活動なども、企業の社会的責任を果たす有効な手段です。社会的な課題に取り組む際には、専門性を持つ団体との連携も有効でしょう。

ピースウィンズ・ジャパンは、1996年の設立以来、国際人道支援から災害緊急支援、動物愛護や地方創生まで、国内外で幅広い社会課題解決に取り組んできました。多くの企業とも連携し、社会課題の解決をともに推進しています。CSR活動や社会貢献の実施を検討される企業の方は、以下のページをご覧ください。

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