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2025年8月26日
コラム
企業版ふるさと納税とは?税制優遇の仕組みを完全解説!
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企業版ふるさと納税は、社会貢献活動や地方創生に高い関心を持つ企業が、少ない費用負担で自治体に寄付できる方法です。この記事では、これから企業版ふるさと納税の制度を活用したいとお考えの企業の方に向けて、以下のことをご紹介します。

・企業版ふるさと納税の概要
・企業版ふるさと納税の条件
・税制優遇の内訳と控除のイメージ
・寄付~税額控除までの6ステップ

企業版ふるさと納税とは?

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企業版ふるさと納税を上手に活用するためには、制度について詳しく理解しておくことが大切です。はじめに、企業版ふるさと納税制度の概要と目的、創設の背景についてみていきましょう。

制度の概要

「企業版ふるさと納税(正式名称「地方創生応援税制」)」とは、各自治体の地方創生プロジェクトに企業が寄付を行うと、法人関係税の負担が軽減される制度です。

税制面の詳しい仕組みは後述しますが、企業版ふるさと納税には、寄付の金額次第で企業の実質的な負担が約1割まで圧縮されるというメリットがあります。これは、寄付額の約7割を負担する通常の寄付制度との大きな違いです。

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また、令和2年10月より人材派遣型が創設されたことも、注目ポイントです。人材派遣型の制度を利用すると、企業は自社の人材を自治体に派遣することで、専門知識やノウハウ面からも地方創生プロジェクトを応援できる形になります。

企業版ふるさと納税制度には、税金の優遇以外にも多くのメリットがあります。企業版ふるさと納税による企業側の効果を詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。

企業版ふるさと納税のメリット・デメリットを徹底比較!向いている企業とは?

制度が創設された背景

近年の日本では、人口減少や少子高齢化の影響から地域における社会課題が複雑化し、地域経済も縮小するなかで、自治体および地域住民の力だけでは地域の活性化を促進したり、課題解決したりすることが難しい状況が生じています。

その一方で、最近のビジネス環境では、SDGsやCSRなどに対する関心の高まりから、地域社会の解決に積極的な企業や材が増加するようになりました。こうした環境の変化を受け生まれたのが、民間企業の資金や人材を地方に還流させる企業版ふるさと納税の仕組みです。

企業版ふるさと納税は、寄付を通じて「地域課題の解決で困難を抱える自治体」と「地域課題の解決に積極的な企業」をつなげることで、官民連携を推進する効果的な支援策です。最近では、寄付をきっかけに企業と自治体が連携する事例も増えてきており、官民のパートナーシップ構築につながる制度として注目されることも多くなりました。

企業版ふるさと納税は、令和2年度税制改正で適用制限の延長や税の軽減効果の拡充を実施したことで、寄付実績と活用自治体数の両方が急速に伸びている状況です。こうした流れを鑑み、企業版ふるさと納税制度による税額控除の特例措置は、令和9年度(2027年度)まで延長されることになりました。

企業版ふるさと納税の条件

企業版ふるさと納税の寄付で税額控除を受けるためには、国が定める要件をすべてクリアする必要があります。企業版ふるさと納税を活用するための条件について、3つのポイントをみていきましょう。

利用できる企業

企業版ふるさと納税による寄付自体は、どの法人(企業)でも行うことが可能です。外国法人でも問題ありません。ただし、この制度の税額控除を受けるためには、青色申告書を提出している法人からの寄付であることが求められます。

寄付できるプロジェクト

企業が寄付を行える対象は、国が認定した地域再生計画に位置付けられる地方創生プロジェクトです。ただし、以下の3要件に該当する自治体のプロジェクトは、この制度の対象外であり、寄付することもできません。

1.本社が所在する地方公共団体
2.地方交付税の不交付団体である都道府県
3.地方交付税の不交付団体であり、その全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域に存する市区町村

「本社」とは、「主たる事務所または事業所」を指します。たとえば、A県B市に本社が所在していた場合、A県とB市への寄付は制度の対象外になります。また、3については、首都圏整備法で定める既成市街地・近郊整備地帯などが該当します。

また企業版ふるさと納税制度では、地方創生に資する活動をしているNPOに寄付ができるようにしている自治体もあります。

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各自治体の地方創生プロジェクトに興味がある方は、以下の記事もぜひチェックしてみてください。

【事例と選び方ガイド】企業版ふるさと納税の実践事例まとめ

寄付額の上限・下限

企業版ふるさと納税制度では、寄付額の範囲を以下のように定めています。

【寄付額の上限】事業費の範囲内
【寄付額の下限】10万円

寄付額の上限である“事業費の範囲内”とは、「事業計画に記載した事業費」ということです。

参考:企業版ふるさと納税型特定非営利活動促進事業に関するQ&A(兵庫県尼崎市)

税制優遇の内訳と控除イメージ

企業版ふるさと納税制度を使って税制面でのメリットを得るためには、その仕組みを理解したうえで適切な寄付額を支払うことが大切です。ここでは、税制優遇の内訳と注意点、具体例を紹介します。

税制優遇の内訳

企業版ふるさと納税の大きな特徴は、「損金算入による軽減効果」に「税額控除による軽減効果」を上乗せすることで、企業が少ない実質負担で寄付できる仕組みになっている点です。

損金算入とは、法人税計算をする際に企業の収益から差し引くことができる費用・損失です。税額控除とは、算出された税額から一定金額を差し引ける仕組みになります。

通常の寄付制度の場合、損金算入できるのは「寄付額の約3割」です。これに対して企業版ふるさと納税では、通常寄付制度と同じ「約3割」の損金算入に加えて、実質的に以下の考え方で算出した「最大6割」の税額を控除できることになります。

大分類上限基準計算の考え方
法人住民税寄付額の4割いずれか小さい方
法人住民税法人税割額の20%
法人税寄付額の1割いずれか小さい方
法人税額の5%
法人住民税で4割に達しなかった場合、その残額
法人事業税寄付額の2割いずれか小さい方
法人事業税額の20%

寄付額から「約3割+最大6割」が差し引かれると、企業の実質的負担は約1割まで圧縮される形です。

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税制優遇の具体例

企業版ふるさと納税による税制優遇の金額は、さまざまな検索サイトや税理士法人が公開するツールを使ってシミュレーションすることも可能です。

たとえば、所得金額(繰越欠損金控除後)が4,300万円の法人が企業版ふるさと納税で寄付を行うと仮定します。

この法人が企業負担を「約1割」に近づけるためには、およそ55万円の寄付をする必要があります。この場合、自己負担額は56,751円、具体的な自己負担割合は10.318%になるでしょう。(令和2年度以降の税制をもとに算出)

ここまでの数字を整理すると、以下のようになります。

所得金額(繰越欠損金控除後)4,300万円
寄付予定金額55万円
自己負担額56,751円
自己負担割合10.318%

寄付予定金額から控除された金額の内訳は、以下のとおりです。

損金算入効果
184,706円
税額控除
308,543円
法人住民税
(137,878円)
法人税割の2割137,878円
寄付額の4割220,000円
上記いずれかの最小金額137,878円
法人税
(55,000円)
法人税の5%492,420円
4割の補填82,122円
寄付額の1割55,000円
上記いずれかの最小金額55,000円
地方法人税
(5,665円)
法人税からの控除による影響5,665円
法人事業税分
(110,000円)
事業税の2割594,300円
寄付額の2割110,000円
上記いずれかの最小金額110,000円

なお、所得金額4300万円のこの法人が寄付予定額を変えた場合、自己負担割合および自己負担額も以下のように変わってきます。

寄付予定額55万円70万円100万円
損金算入効果184,706円235,081円335,830円
税額控除308,543円354,600円446,716円
自己負担額56,751円110,319円217,454円
自己負担割合10.318%15,760%21,745%

このように自己負担割合を1割に近づけるためには、自社の所得金額に応じた寄付額の調整が必要になります。

寄付から税額控除までの6ステップ

企業版ふるさと納税制度で寄付を行い、税額控除を受けるためには、以下の流れで手続きを進める必要があります。各ポイントをみていきましょう。

Step1:プロジェクト検索

最初に行うのは、国が認定した地方創生事業(地方創生プロジェクト)を調べる作業です。最も簡単な調べ方は、内閣官房・内閣府の「企業版ふるさと納税ポータルサイト」や、「ふるコネ」「企ふるオンライン」などの民間サイトなどで検索する方法になります。

また、特定の都道府県や市区町村、地方創生事業を行っている団体などを応援したい場合は、各自治体や団体のホームページから情報チェックや問い合わせを直接してもよいでしょう。

たとえば、和歌山県岩出市や福島県では、以下のページで地方創生事業の募集チラシや手続きの流れなどを紹介しています。

参考:企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)(和歌山県岩出市)
企業版ふるさと納税のご案内(福島県)

また、さまざまな自治体と連携して地方創生に取り組んでいる認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでも、企業版ふるさと納税で支援できるプロジェクトを実施しています。寄付に関するお問い合わせや資料請求を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

参考:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン

Step2:寄付申込

寄付したい事業が決まったら、自治体のホームページや問い合わせを通じて入手した「寄付申出書」に必要事項を記入して、指定の方法で送付します。様式は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような内容を記載します。

  • ・申出日
  • ・法人名
  • ・代表者名
  • ・本社住所
  • ・法人番号
  • ・寄付申出額
  • ・支払予定時期
  • ・寄付を希望する事業
  • ・ホームページなどにおける法人名などの公表・掲載の有無
  • ・法人のホームページURL
  • ・法人からのメッセージ
  • ・連絡先(担当者名/住所/電話番号/E-mailアドレス)など

Step3:入金/受領証取得

「寄付申出書」が受理されると、各自治体から「納入通知書」などが送られてきます。期日までに寄付金を納付しましょう。

寄付金納付が確認されたあと、「受領証」が届きます。この受領証は、Step5で使うものです。大切に保管しておきましょう。

Step4:損金算入

企業版ふるさと納税による寄付金は、「特定寄附金」として支出年度に全額損金として処理します。たとえば、ある自治体に企業版ふるさと納税で30万円の寄付(出金)をした場合、仕訳例は以下のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
寄付金300,000預金300,000

さまざまな自治体や事業に寄付をした場合、決算時期の集計を効率よく進めるために、月単位の一覧表などで寄付情報をまとめておくのがおすすめです。

Step5:決算処理と税額控除の申告

決算時期に入ったら、例年と同様に青色申告書を作成する手続きと合わせて、企業版ふるさと納税の税額控除を受けるための処理を行います。

企業版ふるさと納税による税額控除を受けるためには、法人税および地方税の申告書に別表の添付が必要です。

参考:認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書(国税庁)

法人税の場合、自治体から届いた「受領証」(正式名称:企業版ふるさと納税の対象となる寄附金に該当することを証する書類)の保存も必要です。地方税の場合は、先述の受領証の写しを、申告する全市区町村に提出する必要があります。

Step6:自治体・プロジェクトからの報告

寄付金を使った地方創生プロジェクトが実施されると、各自治体や事業団体のホームページ上で報告レポートなどが掲載されます。寄付が有効に活用されたのか成果を確認し、今後の寄付方針の検討に生かしましょう。こうした情報に目を通すことで、寄付金の使われ方などもイメージしやすくなります。

また、このような自治体による報告や、自社の広報物などでプロジェクト貢献について情報発信することで、自社の社会貢献を内外にアピールすることが可能です。

参考:第1弾企業版ふるさと納税 ご報告(所沢市)
令和5年度企業版ふるさと納税寄附充当事業の実績報告(ふじみ野市)

まとめ

企業版ふるさと納税は、税制優遇の仕組みを活用することで、地域社会の課題解決に高い関心を持つ企業が少ない負担で自治体に寄付できる仕組みです。

今回は、利用条件や税制中心の解説を行いましたが、企業版ふるさと納税にはほかにも多くのメリットがあります。SDGsや地方創生などの取り組みに関心がある方は、以下のページも参考にしてください。

企業版ふるさと納税のメリット・デメリットを徹底比較!向いている企業とは?
【事例と選び方ガイド】企業版ふるさと納税の実践事例まとめ

1996年の設立以来、国内外のさまざまな分野で支援活動を行っている認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでは、さまざまな企業様と連携しながら地方創生などの取り組みを行っています。

企業版ふるさと納税の仕組みは、ピースウィンズ・ジャパンへの寄付でも活用可能です。本部のある広島県神石高原町、事業地である島根県海士町への納税で、ピースウィンズの災害支援事業や保護犬事業、教育事業などをご支援いただけます。ご関心のある方は、以下のページから連携事例や概要をご確認のうえ、お問い合わせください。

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