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私たちの活動

【東アフリカ干ばつ】安心して祖国に戻る日まで

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の事務所から歩いて2分のところにある売店の主モハメッド(37)は、20年前17歳の時に、軍に入隊したくないという理由で、エチオピアからダダーブ難民キャンプに逃れてきたという。
その彼のアメリカ移住が最近、承認されたらしい。時期や州はまだ決まってないそうだが、「アメリカに行ったら母親をアメリカに呼ぶんだ。父は呼ばないけどね」とうれしそうに話す。
家族と電話で連絡をとるようになったのは4年前からで、6人兄妹の長男なのに弟たちの方が金持ち、なのだそうだ。
兄妹からはエチオピアに帰ってこいと言われるが、エチオピア人としては帰るつもりはなく、アメリカ人として家族を訪ねるという。
彼は家族の中で唯一のマンチェスター・ユナイテッドファン(イギリスのサッカーリーグ)で、今季に入団した香川真司の活躍にすごく期待している。彼の店にいくと、「昨日、日本はUAEに勝ったね。なんで香川は前半だけしか出れなかったんだ」と話が弾む。

ダダーブ難民キャンプでは約47万人の難民が生活している。
もともとは辺境の小さな町に過ぎなかったのが、住民の何十倍という難民の流入で膨れ上がった。
人口でいうと、ケニアではナイロビ、モンバサといった大都市に次いで3番目、ソマリアでは首都モガディシュの次に大きな規模となる。モハメッドのようなエチオピア難民(約18,000人)や、スーダン難民(約1,000人)もいるが、大半はソマリアからの難民(約45万人)で、紛争や自然災害のため祖国から逃れてきた。

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上空から見たダダーブ難民キャンプ

(C)IOM/UNHCR photographer:Brendan Bannon

ダダーブに初めて難民キャンプが作られたのは1991年と20年以上も前のため、難民になって3世代目となる家族もいて、子供たちは難民キャンプを出たことがなく、読み書きはソマリア語よりスワヒリ語のほうが得意ということがあるそうだ。
大人になっても、難民という立場ゆえに、就職できる機会や業種が限られている。
そこで、多くの難民が希望しているのが、モハメッドと同じように、北米やオーストラリア、ヨーロッパなどの国籍を得て移住する「第三国定住」と呼ばれるものだ。
ただ、その門戸は狭く、年間で約800名に留まる。審査も厳しい。そこで、とくに若者たちの中には、まだ情勢が安定しているとはいえないソマリアに戻って職を探すという選択をするものもいるそうだが、全体から見るとごく少数にしかならない。
そこで、ソマリア国内の情勢が安定して安全に帰還できるようになることが、ダダーブに住むソマリア難民約45万人が直面している問題への最も現実的な解決策となる。

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難民キャンプで生まれ、育つ子どもたち

現在、ソマリア情勢には変化の兆しが見え始めている。
8月にソマリアで20年ぶりとなる議会選挙が行われ、9月には大統領が選出された。
ただ、大統領が選出された翌日に、大統領が泊まるホテルがテロ攻撃に遭うという事件に象徴されるように、その見通しはいまだ不透明だ。
もう一つの変化が、ケニアやウガンダ、ブルンジなどの軍隊で構成されるアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISON)軍とソマリア連邦共和国軍が、アルシャバブ(アルカーイダのネットワークに属しているといわれ、ソマリア南部を実効支配している)の本拠地キスマヨ攻略に向けた軍事行動を本格化させていることだ。
ケニア政府は、キスマヨを攻略できればソマリア内の情勢は急速に改善し、ダダーブの難民たちの帰還も早急に開始できると見ている。
これに関連して、昨年10月にケニア軍がソマリア南部への侵攻を開始して以来、ケニア政府のダダーブ難民キャンプについての考え方は、国際機関やNGOの見方に比べると、ソマリア国内の治安状況について楽観的で、難民の帰還を積極的に進めようとしている傾向がある。
この背景には、ダダーブを含んだケニア国内で、アルシャバブが関与したとみられるIED(即製爆弾)を使ったテロ事件が頻発していることが挙げられる。
警察官を始めとする多数のケニア人が犠牲となっている中、アルシャバブのシンパが潜伏しているといわれるダダーブ難民キャンプの存在自体がケニア政府にとって大きな負担になっている。このような政府の方針もあって、現在、新たにソマリアから流入してきた難民については、家族がすでに難民キャンプで暮らしているなど特別なケースを除いてダダーブでの受け入れはされていない。
どうするかというと、代わりに南スーダンとケニアの国境付近にあるカクマ難民キャンプに移されている。
テロ事件の被害を受けているケニアの立場に立てば、テロ活動の温床となりうるキャンプを国内に抱えていることの苦悩は理解できる。
その一方で、ソマリア国内の情勢が本当に安定し、難民たちが安全に帰還できる状況になる前に、半ば強制的な帰還が進められてしまうことへの懸念も同時にある。
加えて、ソマリアの治安情勢の先行きはいまだ不透明だが、仮に情勢が安定して帰還が始まっても、45万という規模の難民の帰還には、相当の年数がかかると予想される。
とくに、古くから難民としてキャンプで生活している人たちは、ソマリア国内の生活基盤を失っていることも多く、帰還には十分な準備の時間とサポートが必要とされる。
PWJは、今年2月からダダーブ難民キャンプで、仮設住宅の建設事業を実施してきた。一昨年から昨年にかけて起こったアフリカの角地域の大干ばつのために、主にソマリアから新たに難民として逃れてきた人たちが生活する新しい難民キャンプで活動している。
難民がソマリアに安心して戻れる日まで、ダダーブで少しでも安全で前向きな暮らしが営めるよう、ピースウィンズは仮設住宅の建設を行っている。

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難民とともに仮設住宅を建設

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完成した仮設住宅

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完成した仮設住宅で暮らす家族

*本事業は、ジャパン・プラットフォームによる資金や寄付金などにより実施しています。

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