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戦争は土と炎の色、その先に希望も 画家イスマイル・ハヤットの思い

戦争の恐怖と生命の重さを、赤と黒を基調に描いた「Ghost Of Next War」
「土の色と炎の色、それにやはり土色をした立体的な仮面のイメージが、私の心を覆っている。色彩の乏しい世界だ」
 
もっとも知られたクルド人画家の一人、イスマイル・ハヤット氏(59歳)は23日、戦争開始後の自身の心の中を、こう語った。芸術活動のなかでハラブジャの悲劇やクルド人の平和への思いを表現してきたハヤット氏が戦火の先にみる希望は、ヒロシマ・ナガサキの惨状を経験して再生した日本の姿だという。
ハヤット氏は2月中旬、スレイマニア市内の美術館で「Ghost Of Next War(次の戦争の亡霊)」という作品展を開いた。床一面に、赤と黒を基調とした絵が展示され、そのうえに生きている鳥や鉢に入れた草花が置かれるという、例のないスタイルだった。絵には、嘆いているような女性やどくろのようなマーク、爆弾を表すような形が描かれていた。
 この作品についてハヤット氏は「赤は血と炎、変革の象徴、黒は煙と灰。草花は戦争後にも生き続ける生命を表し、鳥のさえずりは幸福を示す」と話していた。作品を床に展示したのは「戦争ではすべてのものが崩れ落ちる」からで、さまざまな人の戦争への思いを表現するため、妻や子どもたちも一緒になって、この作品をつくり上げたという。
 
3月15日には、15年前の1988年3月16日にフセイン政権による化学兵器攻撃を受けて5000人が死亡したといわれるハラブジャをテーマにした作品展を、同市内のホテルで開いた。93年以来、描いてきたハラブジャをテーマにした作品をコンピューター処理し、色のない白と黒の作品に転換。その後、いくつかのモチーフを書き加えるという手法をとった。
 「悲劇に直面するたび、私の中の色が変わる」とハヤット氏。このときは、ハラブジャの悲劇を象徴する色は、白と黒に思えたのだ、という。
 地下室での死、倒れた女性、被害を受けたロバなど、すべての命をむしばむ化学兵器の悲惨さをさまざまな形で表現。蝶が炎に焼かれる絵では、優しさと美しさが破壊される様を描いた。
イラクに対する戦端が開かれ、ハヤット氏の心の中の色は、土色と炎の色になった。「戦争とは恐怖だ」と訴える一方で、「この戦争には理由がある。悪いシステムが永久に続くということはありえない」とも語る。
「戦争をめぐるいくつもの歴史がある。ヒロシマ・ナガサキの悲劇を経験した日本は、荒廃から立ち直り、生まれ変わった。日本と同様にこの国も、民主的で、自由な活動ができ、クルド人の声が届く社会に変わってほしい。それが私の希望だ」
戦争の悲惨さに胸を痛めながら、ハヤット氏はそう願う。
【3月23日の現地】
[町]
 スレイマニアでも、なお5割以上の店が閉まっている模様。米軍によるイスラム勢力の拠点とされる地域への攻撃が始まり、イラン国境に近い地域でイスラム勢力によるとみられる事件も起きているためか、クルド人勢力の兵士による巡回・警戒が強化されている。市民たちの表情もやや硬化した印象。
[避難民]
 困難な状況が予想される避難民の動向を引き続き注視、情報収集に努める。

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