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【バングラデシュ】新型コロナウイルス啓発活動:現地スタッフからのレポート

バングラデシュのコックスバザールには、ミャンマーから逃れてきた約86万人のロヒンギャ難民が暮らしています。ロヒンギャ難民キャンプの人口密度は1平方キロメートルあたり4万人で、これは東京23区の約2.7倍に相当します。10メートル四方の仮設住宅に8人から10人家族で暮らしていることが多く、トイレやシャワーなどの衛生施設は複数の世帯が共同で使用しています。このように、ロヒンギャ難民キャンプは感染症が広がりやすい特徴を持っていますが、新型コロナウイルスの感染予防に必要な石鹸などの衛生用品や、感染予防策の知識も不足しているのが現状です。

 

3月中旬にバングラデシュで最初の新型コロナウイルス陽性者が確認されて以降、ロヒンギャ難民キャンプへのアクセスは厳しく制限されました。しかし、それにも関わらず5月には難民キャンプ内でも感染者が確認され、今もその数はじわじわと増加を続けています。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)と提携団体のダッカコミュニティホスピタルトラスト(DCHT)は、3月から新型コロナウイルスの感染予防策についての啓発活動を開始し、6月からは保健セクター主導の地域調査にも取り組んでいます。この地域調査は、保健ワーカーが一軒一軒仮設住宅を訪問して、有症者の特定を行い、医療機関の受診の促進、適切な検査と隔離を実施することを目的としています。また、この活動で集められたデータは、コミュニティ内での有症者の増減や年齢・性別などの属性別の傾向などを分析することに役立てられ、難民キャンプ内での感染の拡大状況を把握する指標として役立てられています。
 


家庭訪問をする保健ワーカー

 

PWJ/DCHTの5人の保健ワーカーは毎日、地域調査のためのインタビュー調査を実施しながら、新型コロナの症状や対策等について啓発活動を実施しています。啓発メッセージは、新型コロナウイルス感染症の症状、感染経路、感染予防策、重症化するリスクが高いのはどんな人か、隔離治療施設についてなど多岐にわたります。一方で、新型コロナの感染拡大以降、人々の間では医療機関の受診控えの傾向が目立ち、定期予防接種の接種率が大幅に下落するなど、新型コロナ以外への影響も広がっています。そのため、私たちの保健ワーカーは新型コロナ以前から実施していた母子保健に関する啓発活動(定期予防接種、産前検診・産後検診、施設分娩などの促進)についても引き続き力を入れて実施しています。

 

新型コロナに関する啓発活動を始めてから7か月以上が経ちますが、キャンプ内ではいまだにマスクをせず適切な距離も保たずに立ち話をする人々の姿が多く見られます。このような状況を招いている原因の一つが、ロヒンギャの人々の間で広まっている根拠のない「噂」です。例えば、「新型コロナはお金持ちの国の人やバングラデシュ人にしか悪さをしない」といったものや、「新型コロナはもはやこの世に存在しない」といった誤った情報を信じてしまっている人が少なからずいます。私たちの保健ワーカーは、キャンプ内の陽性者数などの現状を伝えることで、人々に新型コロナの正しい認識を広めるよう努めています。

 


朝のマーケット。マスクをつけている人はまれ。

 


マーケットに集う人々に適切な距離について実演しながら説明する保健ワーカー

 

このような噂に効果的に対処するために、保健ワーカーはコミュニティのリーダーや宗教指導者とも協力して活動を行っています。マジと呼ばれるリーダーや、教師、イマーム(宗教指導者)などと良い関係を築き、彼らからもコミュニティの人々に、新型コロナやその他の健康にかかわるメッセージを伝えてもらうようにお願いをしています。コミュニティの人々は、支援物資の受け取りや、学校の授業、家庭内学習、日々のお祈りなど様々な機会にこのようなリーダーたちと顔を合わせます。コミュニティの人々が信頼を置くリーダーたちの口から正しい情報を伝えてもらう機会を増やすことにより、人々が噂に惑わされないようになることを意図しています。

 


保健ワーカーから手洗い方法の説明を受けるマジ

 

また、キャンプ内の店やマーケットに人が集まっているところを見つけたときには、適切な距離を保つことやマスクを着用することの重要性を保健ワーカーが人々に説明します。バングラデシュでは3月から教育施設の閉鎖が続いており、難民キャンプ内でも同様に教育関連施設はいまだ再開されていません。しかし、子どもたちは毎日、ラーニングセンターの周りで遊んだりおしゃべりをしたりしています。保健ワーカーはこのような子どもたちにも感染予防策の啓発活動を実施しています。

 


ラーニングセンターに集まる子どもたち

 

PWJはこのような啓発活動が、人々の健康に関する知識の向上や行動変容につながり、コミュニティ全体へ長期的な利益をもたらすことを目指して活動を続けています。

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