2020.11.11
シリア
海外人道支援
シリアでは、激しい戦闘で壊滅的な被害を受けた町でも、武力攻撃がなくなり安全になると、避難先から戻ってくる人たちが増えていきます。多くの場合、元の家は壊されていて、そのままでは住むことができません。それでも「我が家に帰る」という強い思いをもって、なんとか自分たちで壊れた家を直そうと試みる人もいます。今回ご紹介するムスタファさんも、そんな一人でした。
「戦闘が酷くなったときに、妊娠していた娘を含む家族全員で隣の県に避難しました。そこで家を借り、5年ほど過ごした後、安全になったので家に帰ってきたのですが、窓やドア、家財や備品もなく変わり果てていて、とても住めるような状態ではありませんでした。
家を直そうにも、避難生活での出費がかさみ、家の修繕費用を賄うだけの経済的余裕がなく、一部のドアや中古の家具を買うのが精一杯でした。
冬になるとドアのないところから寒気が入り込み、暖をとることができず、孫を寒さから守るために再び家をでる決断をしましたが、借家の家賃が重くのしかかり、さらに経済的にも追い込まれていきました。
そんな状況にあった時、私の家がPWJの住居修繕支援の対象になりました。家賃を節約するために、修繕工事が決まるとすぐに自分の家に戻り、工事をしていない部屋で過ごしながら工事が終わるのを待ちました。」
ムスタファさんは、「家の天井に空いた穴が修繕され、電気や排水設備などが整った安全であたたかい家で孫と一緒に過ごせることにとても満足し、感謝している」と話してくれました。
シリアには、ムスタファさんのように「我が家にいたい」という思いで壊れたままの家に住み続ける人や、帰りたいけれど家が住める状態でないために帰ることができない人が多くいます。特にシリアの人々は、代々住んだ家を家族の歴史が刻まれた遺産だと考えて、とても大切にしています。
PWJは、彼らの「我が家に帰る」という願いをかなえるべく、提携団体と共に活動を続けてまいります。
※本事業は、皆様からのご寄付のほか、ジャパンプラットフォーム(JPF)からの助成金により実施しています。今後とも、温かなご支援をよろしくお願いいたします。
※シリアの現地情勢を考慮し、関係者に危険や不利益がおよばないよう活動地域の詳細は伏せ、名前は仮名を使用しています。