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私たちの活動

【スリランカ】Covid-19のロックダウンで加速した有機農業のニーズ、その普及に大きく貢献

「教わったとおりに作ってみたら、ちゃんと温度が上がってるんだよ!!」と興奮気味に自分が作ったコンポストを誇らしげに見せてくれる農家の女性。


一番にコンポスト作成を始めた農家の女性。裨益農家の中でも一二を争う品質

 

一般的なスリランカの農家は、化学肥料に頼った農業を行ってきたため、「化学肥料がないと農業ができない!」という思い込みがあります。また、熱帯気候のため、年中害虫が発生しやすく、一雨降れば、雑草も簡単にグングン生えてしまうため、大量の殺虫剤や除草剤を使用して農業を行う農家がほとんどでした。また近年は、選挙の際に、政府を通して化学肥料が無料で配布されており、大量に化学肥料がばら撒かれていました。このため、土壌が疲弊し、土壌微生物も減り、土地の養分がなくなり、より多く化学肥料を投入しないと作物が育たないという悪循環が生まれていました。


無造作に置かれてる化学肥料や殺虫剤などが井戸の近くやそこら中に転がっている

 

2019年9月から開始した「トリンコマリー県 帰還民再定住エリアを中心とした農業水利施設の整備による農地の復興と農業収入の多源化による収入向上支援事業」の3つの柱の中の1つである「有機農業の推進」プログラムでは、有機農法の手法や知識を学ぶ実践的なトレーニング、ビジネスマインドの涵養を促すビジネストレーニング、農機具の支援を行ってきました。

PWJは、広島県の神石高原町にある有機農場「TANABE FARM」の田邉さんを2016年から毎年スリランカへ派遣し、2019年には日本に農家を招へいし、実践有機農業トレーニングを実施してきました。長年のスリランカとの交流の中で、トリンコマリーの農家が地元で簡単に手に入れられる材料で、かつトリンコマリーの土壌にあったコンポストの配合や作り方を田邉さんに教えていただきました。


日本招聘の様子

 

2019年度の事業では、有機農業を実践する農家全員がコンポスト生産トレーニングを受け、それぞれで生産するための資機材の提供を行いました。トリンコマリーの土壌の状況の話から、土壌の仕組みや土壌微生物の役割、有機コンポストが果たす役割などを伝えるための手作りの紙芝居を作成し、PWJの駐在員による“あまり上手くない現地語”を駆使してのプレゼンテーションを行いました。


駐在員が手作りした紙芝居。一生懸命現地語で話しているのに、横でローカルスタッフがその真意を現地語に通訳するという面白い展開で、大いに盛り上がりました。

 

コンポスト作成実践トレーニング
土壌改善の方法を説明した後、皆で実際にコンポストを作る作業を行いました。材料は、牛糞、鶏糞、米ぬか、もみ殻、落ち葉、山土、特製の発酵促進お粥、水!鶏糞が手に入らない場合は、ヤギ糞もOK。
それぞれの農家が真剣に話を聞き、配合分量を書きとめ、男性陣は撹拌を一緒に手伝ってくれました。

 

撹拌初日は、材料そのままの見た目で、臭いも「糞」がたくさん入っているのでものすごく臭いというのは、誰しも理解できたと思います。


撹拌の様子

 

しかしその後、料理番組のように、1週間前に仕込んだコンポストを見せ、その見た目や、臭いの変化を見てもらいました。さらに温度が60~70℃に上がっているのを温度計で見せ、実際にそのコンポストを触ってもらいました。皆、ただの牛糞やらにこんな変化が起こるのか?!と驚いていました。そして、自分たちで本当にできるのか?少し半信半疑の部分もあったようです。


1週間近くたったコンポスト、真ん中に小さく見えるのが温度計。70℃ぐらいまで温度が上がっている

田邉さんから教わったコンポストは、最初の一週間は毎日、温度計で温度を計り、撹拌と水分調整を行います。水分調整をしっかり行えば、簡単に発酵するため、温度が一気に上がり、臭いや見た目が明らかに変わるので、視覚的にも触覚的にも分かりやすい成功体験ができ、農家はやる気が湧き、自信にもつながっているようでした。

 

必要なものはすべて自分の身の回りにあった…
事業開始当初は、どれぐらいの裨益者が実行してくれるかな…と思っていました。そこへ突然のパンデミックが発生し、スリランカ・ルピーが急落、さらにルピー安を食い止めるために輸入制限がかかりました。すべて輸入に頼っていた化学肥料も値段が高騰するだけでなく、供給がストップしてしまい、手に入りにくくなりました。
全国的な化学肥料不足が続く中で、コンポストの重要性に気がついた農家!そして、トリンコマリーは、他の地域と比べても農業、酪農、漁業すべてを行っている農家も多く、より簡単に家畜の糞や魚のアラなどが手に入ります。つまり、ほとんどの材料が家の周りにある!あまり興味を示していなかった農家も次々にコンポスト生産を始めるようになりました。そして、今まで化学肥料を買うために数千から数万円を投じていたこと、有機コンポストの材料はすべて自分の家にあることに気が付き、たったの数百ルピーで作れた!と、報告してくれる農家もいました。


今まで化学肥料に数千ルピーも使ってたのに、たった数百ルピーでできたよ!と報告してくれた農家。

 


コンポストの状態を確認する様子

 


トレーニングで習った液肥(牛糞や魚のアラ、生乳などを使った液肥や唐辛子などを使用した自然農薬を準備している農家。すべて身近に手に入る恵まれた環境にあるトリンコマリー

 

タナベ式コンポストの普及により、化学肥料で疲弊してしまった痩せた土地が肥沃な土に変わることを夢見て事業を続けていきたいと思います。
今後もスリランカ事業では、トリンコマリー県内の再定住区域を中心に有機農業の推進を通じて、地元農家の収入源の多源化を図り、地元経済の活性化の支援を行ってまいります。本事業は外務省の日本NGO連携無償資金協力からの助成金とサポーターの皆様からの寄付金を得て支援を行っております。皆さまからのご協力、またスリランカの農業の復興に寄与できるようなお話等もございましたら、是非ご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

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