ピースウィンズ・ジャパンは、紛争や災害などの脅威にさらされている人びとに対して国内外問わず支援活動を行うNGOです。

海外人道支援

Overseas

2010.8.2

不安なく、思いっきり勉強がしたい!!

南スーダン 海外人道支援

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)のボー事務所があるジョングレイ州ボー市内の小学校で、先日、過去に建設したトイレのモニタリングの一環として、フォーカスグループディスカッション(対象を絞ったグループ討議)を行ないました。これは、15歳から18歳の男子生徒や女子生徒を対象に、今後の衛生事業の改善に役立つ意見などを集めるためにグループで話し合ってもらうものでした。

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グループディスカッションの様子
(C)PWJ/Ayuko TAKAHASHI

グループ全体で行った導入部では、女性があまり表に出ないことがよしとされる文化が根強く残っているせいか、女子生徒たちはとても控えめで、自己紹介の声もほとんど聞こえないほどでした。
はじめに男子生徒のディスカッションを終え、「大丈夫だろうか…こんなに控えめだと、意見や提案など言ってもらえるのだろうか」などと不安に思っているうちに、女子生徒グループのディスカッションが始まりました。
ところが、男子生徒の姿が扉の向うに消えると、彼女たちは見違えるほど活き活きと話し始めました。ディンカ族の文化の中で、女性が教育を受けることの難しさや、教室や学校外で日常的に遭遇する苦労の数々などを、心を込めて話してくれました。
「トイレの鍵は男子生徒が持っているので、トイレに行きたくても恥ずかしくて言い出せない」
「衛生やトイレの使い方に関する研修などは、学校にある衛生クラブのメンバーを対象に行い、彼らが新入生にトレーニングを行なったらいいのではないか」
「衛生クラブに入る女子生徒の数をもっと増やせるよう、学校にかけ合って欲しい」
といった具体的な意見もあれば、
「男子生徒がいる場で、手を挙げて意見を言ったり、答えたりするとからかわれるので、教室ではできるだけ静かにしている」
「学校から帰ると3キロ離れた井戸まで水を汲みに行き、そのあと家の掃除や食事の手伝いをしないといけないから、勉強したいけれど、学校にいる間しか教科書に触れない」
「男子生徒は宿題ができるけど、私たち女子生徒が宿題をする時間を見つけることは、不可能に近いくらい難しい」
など、彼女たちが置かれている厳しい学びの環境についても垣間見ることができました。
なかでも、「クラスの男子生徒と校外で会話をしているところを家族や親戚に見られると、学校を辞めさせられてしまうから、毎日気をつけている」という発言には、はっとさせられました。
この言葉の中には、ディンカ文化の核となる部分が見え隠れしています。
ディンカ族の人びとが結婚する際、結納金として男性側から女性側に何十頭かの牛を贈る風習があります。ディンカ族が飼う牛は、1頭当たり日本円では約8万から10万円ほどする(牛の種類やサイズによって異なる)ため、男性にとって結婚は人生で最もお金を使う重大事なのです。
しかし、結婚する若い男性に、必要な牛を自ら買えるだけの蓄えがあることはまれで、自分の姉妹が結婚した時に受け取る牛の数が、その家の男性の結婚を左右することになります。そのため、女性たちの結婚については、彼女の親兄弟が、相手の家の資産で判断して決めるような伝統が存在し、家族に隠れて恋愛し、妊娠してしまったら、その女性が結婚で受け取る牛は減ってしまうそうです。
結婚適齢期の男性がいる家庭では、より多くの牛を得るため、家族内の女性の行動にとても敏感になります。この結果、上記の女子生徒のように、「クラスの男子生徒と話しているのを家族に見られると、学校をやめさせられる(そして結婚させられてしまう)」という彼女たちの発言へとつながっていくのです。
このような背景から、今回、フォーカスグループディスカッションに参加した女子生徒は、口々に「ボーに女子校を建ててほしい」「寄宿舎のついた女子校に入学できれば、明日辞めさせられてしまうかもしれないという不安に悩まされず、思いっきり勉強ができる」と夢を語ってくれました。
今回のディスカッションでは、彼女たちの夢である、勉強環境の整備を約束することは、残念ながらできませんでした。しかし、1時間かけて話し合う中で、家の手伝いなどで時間が限られていても真剣に勉強したいという彼女たちの熱意が伝わってきました。私を含めたスタッフは、彼女たちの思いに圧倒され、学校を後にしました。

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