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【南スーダン】母国のために、南スーダン事業の仲間たちの思い

「父と兄の安否が分からないんだ」。4月初旬、ケニアの首都ナイロビの飲食店。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が南スーダン事業で協働する現地NGO「The Health Support Organization (THESO)」代表のジェフ(35)は、唐突に言った。夕食の席にそぐわない言葉に、私は食事の手を止めた。もし自分の父が、兄が、紛争に巻き込まれて生死が分からなかったら――。ジェフのように母国に残り、他人のために働けるか。彼の原動力はどこから来るのか。
3月下旬から約2週間、担当するアフリカの各事業地に出張した。普段は東京事務所でメールや電話で現地スタッフと連絡を取り、南スーダンやウガンダ、ケニアの難民キャンプなどでの事業を進めている。今回PWJ事務所を置くナイロビでの会議で、THESOのメンバーと初めて顔を合わせる機会があった。

【写真説明】会議で意見を交わし合うTHESOのメンバーたち
南スーダン国内は昨年7月から内紛が絶えず、日本人スタッフは入国できない状況が続いている。PWJは南スーダン国内に直接支援を届けることができるTHESOと協力し、4万人規模の国内避難民キャンプや周辺地域で安全な水を供給したり、トイレを建設したりしている。南スーダンは「自衛隊が事業に区切りをつけて撤収した」という報道で記憶に新しいが、国際社会では「アフリカ最大の危機」と言われ、国内避難民が193万人、国外に逃げた難民が189万人にものぼるとされる。3月末には、私たちと同じ支援関係者6人が殺害される事件もあった。

【写真説明】小学校トイレが完成した際のセレモニーの様子/南スーダン国内で実施する衛生普及活動の様子
THESOのメンバーは危険と隣り合わせの中、不条理な紛争に苦しむ人たちのために汗を流している。「国内避難民キャンプのセキュリティ面は日々異なる」といい、キャンプに水を運ぶ給水車が政府軍に襲われたり、支援が偏ればキャンプ内で暴動が起きたりすることもあるという。それでも、メンバーの一人は「THESOの仲間たちがいるから、自分も鼓舞されて頑張れろうと思えるんだ」と力強く語る。
会議では今後の事業計画について、限りある予算と一人でも多くの人に支援を届けたいという思いの狭間で議論がなされた。驚いたのは彼らの集中力。午前9時に始まり、昼食も食べず、休憩もはさまず、終わったのは午後4時。これまで経験した中で最も長い会議となった。一方、国内避難民キャンプ内の小学校にトイレを建てた際のセレモニーの動画も披露してくれた。メンバーたちの緊張感にあふれる顔つきが、一気に緩んだ瞬間だった。

ジェフの家族の話はこの日夜、会議の労をねぎらい合っていた時のことだった。THESOのメンバーたちと握手して別れた後、私は彼らの思いが少しわかった気がした。THESOを突き動かすのは、キャンプに避難している人たちと同様に、母国で多くの苦しい思いを経験してきたからなのだ、と。日本で生まれ育った私には想像しかできないけれど、同じ事業を運営するパートナーとして誇らしく思うとともに、彼らの高い志に少しでも近づきたい。そんなふうに思えた出張になった。私たちは引き続き、THESOの仲間たちとともに、南スーダンが直面する人道危機に最大限の支援を届けていきたい。

海外事業部 田中佑依

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