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【ケニア】キャンプ閉鎖騒動と難民のこれから -難民キャンプと祖国のはざまで-

皆さま、こんにちは。ケニアでダダーブ難民キャンプ事業を担当している船山と申します。ケニア北東部、ソマリア国境沿いにあるこのキャンプは、30万人以上のソマリア難民が暮らす世界最大の難民キャンプです。
しかし、今年5月、ケニア政府は「年内にこのキャンプを閉鎖する」と突如発表し、国連事務総長や米国務長官も巻き込んだ大騒動となりました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を中心とした交渉の結果、「年内にキャンプ人口を15万人削減する」ことで落ち着きました。ヨーロッパを中心に、難民・移民への世界的な関心が高まっている中でのキャンプ閉鎖騒動は、皮肉にも、世界最大でありながら注目度の低かったダダーブに、改めて関心を集める大きなきっかけとなりました。

ダダーブ
上空から見たダダーブ難民キャンプ

こうした流れの中、7月12日、最年少ノーベル平和賞受賞者であるパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんがダダーブを訪れました。この日19歳になったマララさんは、2014年から毎年、誕生日に女子教育が不十分な地域を訪れて啓発活動を行っています。
「世界は、子どもたちが難民となることが、彼ら自身の過失ではないということが理解できていません。国の復興のためには未来の世代に投資することが欠かせないということも、難民として暮らす子どもの教育は我が子の教育と等しく重要であるということも、世界は理解できていません」と、マララさんは教育の重要性を訴えます。
スピーチの中で、マララさんはソマリア難民の少女ラーマさんの経験を紹介しました。「ラーマは二度、故郷からダダーブ難民キャンプに移ってきました。一度目は祖国ソマリアでの紛争から逃れるため、そして二度目は、教育という夢を追うためでした。ラーマは一度家族と共にソマリアへ帰還しましたが、故郷には彼女が通える学校がなかったので、教育を受け続けるために一人で再びダダーブに戻ってきたのです」
ソマリアでは今も政府が全土を統治できておらず、学校や病院も十分に整備されていません。イスラム教が圧倒的主流のため、特に女子教育は二の次にされがちです。教育を受けるには、ラーマさんのように単身キャンプに戻らざるを得ないのです。難民となって近隣国のキャンプで育った人々が、母国に残った人々よりも長く質の高い教育を受けられるというのは、ソマリアに限った話ではなく、難民キャンプではよく耳にする話です。
ダダーブダダーブ
写真左:学校に通う難民の子どもたち、同右:イスラム教徒が多いダダーブの町。幼い少女もベールを被っています
段階的な人口削減計画を踏まえ、キャンプの子どもたちはもう中学校に入学できなくなりました。ソマリアでのインフラ整備の必要性は繰り返し強調されてはいますが、資金が集まったとしても一朝一夕に達成されるものではありません。キャンプ閉鎖に向かうこの大きなうねりの中で、難民の教育への権利が奪われてしまうことが懸念されます。
閉鎖計画はケニア・ソマリア両政府とUNHCRを中心とした国際社会によって形作られていきますが、そこに難民たちの声はどのくらい反映されるのでしょうか。自国民の安全を理由に世界が不寛容さを増す中で、その代償を負うのが難民であってはなりません。難民の声に耳を傾け、可能な限り彼らに寄り添う支援が必要なのだと、改めて感じています。

ダダーブ
ダダーブ難民キャンプで暮らす子ども

報告:船山静夏(ケニア駐在ダダーブ事業担当)

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