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私たちの活動

【東北支援】高齢者や住民らの交流拠点「ハレバレー」完成へ

2011年3月11日に発生した東日本大震災から間もなく4年。被害の大きかった宮城県南三陸町で、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、地域コミュニティの再生を支援しています。高齢者や住民らの交流拠点となる施設「晴谷驛(ハレバレー)」は今春完成予定ですが、各種の創作活動や書道、グラウンドゴルフなどの活動はすでに活発になっています。なぜ、こうした取り組みが求められるのか、被災した2人の町民のインタビューを通じて考えました。
震災の被害を受けた東北地方の沿岸部は、住民同士のつながりが深い地域でした。しかし、震災後、被災地では住民のつながりは大きく変化しました。仮設住宅の建設場所は、多くが元の地域から離れ、住民はばらばらになりました。仮設住宅での生活が長期化するとともに仮設住宅でのコミュニティができてきましたが、自宅の再建や災害公営住宅の完成とともに仮設住宅から転居が進み、仮設住宅でできたつながりも失われつつあります。
PWJが建設を進めるハレバレーは、仮設住宅、災害公営住宅、自宅などにかかわらず、地域全体の高齢者や住民らが集まり、活動することを通じて、震災前の日常とコミュニティの一部を取り戻そうとしています。施設内での取り組みにとどまらず、施設運営や今後のコミュニティづくりを考えるため、住民たちによる各地への視察や勉強会も続けています。

東北
建設が進むハレバレー(3月3日撮影)

「週2回のサークル活動が楽しみ」 佐藤夏子さん
志津川中学校の校庭に建てられた仮設住宅で暮らす佐藤夏子さん(74歳)は「今は、週2回通っている2つのサークル活動が楽しみ」といいます。1つは廃材を活用して路面や建物壁面を装飾するための素材をつくる「エコ平板」創作教室、もう一つはエコ平板の参加者たちで実践するグラウンドゴルフです。「週2回だけど忙しい」「みんなとお話しできるのが一番楽しい」と顔をほころばせます。

東北
佐藤夏子さん

震災前は夫の営む建築業を手伝っていて、趣味の時間はあまりありませんでした。震災当日、夏子さんは、「老人芸能大会」に出演する義母(当時99歳)に付き添い、同町内の宴会場「高野会館」にいました。地震発生後、出番がまだだった人たちが外に出ようとすると、会館の従業員たちが制止しました。
「絶対に外に出しません」
「死んでもいいなら行きなさい」
夏子さんたちは会館で一夜を過ごし、翌日、避難所の小学校へ移動しました。足の悪かった義母はヘリコプターで釣り上げられる体験をしました。出番が早く、先に帰路に着いた人たちは、何人も津波に流され、帰らぬ人となりました。
家族は無事でしたが、家は流され、仕事用の車4台や機械類も失いました。仮設住宅に入居して間もなく夫が亡くなり、義母は100歳と1か月で世を去りました。集団移転先の造成工事の完成や分譲がまだのため、自宅をどこに再建できるかさえ見えません。建築業は、息子が継ぎ、隣町の登米市に移り住んでやっていますが、依頼の多くは先々代からの縁がある南三陸町内からです。
「一番辛いのは、家族が一緒でないこと。早く一緒に自分の家に入りたい」と夏子さんはいいます。
「仮設住宅でも、寒いと人は外に出てこない。昔みたいに一緒にお茶を飲んだりもしない。慣れたと思ったけど、またばらばらになる」。だからこそ、みんなと話せる機会が楽しみなのだそうです。

東北
エコ平板の創作に取り組む佐藤夏子さん(左)。作業の合間には参加者同士で談笑する

「視察に行くと、人と会って話す」 佐藤長義さん
旧入谷中学校の敷地内に建てられた仮設住宅に入居する佐藤長義さん(82歳)は、25歳ごろから65歳ごろまで、とび職として関東一円の現場で働きました。「昔は百姓では食えねぇから、出稼ぎに出たんだ」と長義さん。東京タワーの建設に関わる仕事もしたといいます。

東北
佐藤長義さん

地震発生時、長義さんは「これは大きいから津波の可能性がある」と思い、避難しましたが、すぐに戻るつもりだったので、ジャンパーも持たず、つっかけ(サンダル)で家を飛び出しました。1960年のチリ地震の津波でも、津波は2階までは達しなかったことと、地震発生当初、予想される津波の高さが「2~3メートル」と伝えられていたことも、その判断を後押ししました。
町外に出ていることが多かったこともあり、町内に知り合いは少ないという長義さん。震災前は趣味の集まりに出かけることも、ほとんどありませんでした。しかし、PWJが高齢者や住民らの交流拠点を計画し、住民たちと類似施設や各種の施設の視察活動を始めると、こうした視察ツアーに参加するようになりました。
「よそを見たりするのは楽しいし、視察に行くと、そのとき人と会って話すべ」 サークル活動だけでなく、視察からも新しいつながりが生まれてきています。

東北
視察で石巻市を訪れた佐藤長義さん(後列右側)、佐藤夏子さん(前列左から3人目)ら。

エコ平板の活用例も確認した

ハレバレーを地域の皆さんの接着剤のような場所に
同町出身で、PWJでハレバレーの事業を担当する西城幸江は「人と人のつながりを取り戻し、コミュニティを再生させるため、ハレバレーを地域の皆さんにとっての“接着剤”のような場所にしたいと思っています。皆さんに『これ、言いね!』と思っていただける活動を一つでも多く実現していきたい」と話しています。
PWJは、これからも宮城県南三陸町でのコミュニティ支援を実施します。引き続き皆様のご支援を宜しくお願いします。

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