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【東北支援】震災3年:支援を考える2/ 「PWJの支援で、『これからも漁業やっていこう』と」

三陸は国内のワカメ生産量の3分の2が採れるワカメの大生産地。2月ごろから続けられてきた今年のワカメの収穫も、5月まででほぼ終わりました。震災以降、韓国産などが流入し、また今年は生育不良だったこともあり、生産量、価格の面で課題は残されていますが、収穫期の間、浜には活気がみなぎっていました。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、震災からの復興には経済の復旧が重要と考え、漁業復興のための支援にも力を入れてきました。「震災3年:支援を考える」の2回目は、宮城県漁業協同組合(JFみやぎ)歌津支所長の千葉信哉さんとともに、PWJの漁業復興支援を振り返ります。【取材・構成 三澤一孔】
千葉信哉(ちば・しんや)さんOLYMPUS DIGITAL CAMERA
1956年、歌津町(現:南三陸町)生まれ。1974年に旧歌津全町漁業協同組合(現:宮城県漁業協同組合)に入り、2010年4月から現職。漁協の仕事のかたわら、自らもアワビやウニをとる。
 
 
漁業がどうなるか見えない時期に、PWJの支援が届いた
「震災直後 は、何の仕事もない。その日、その日を生きるのが精いっぱい。漁業がどうなるか、方向性も出ていなかった。そんなとき、PWJが来て、『養殖の復旧をお手伝いしたい』と。漁業を再開する準備段階にも至っていないときだった」
宮城県南三陸町での活動を始めていたPWJは、漁業支援に対する要望を把握し、取り組みの重要な柱として漁業復興への支援を決定しました。まず漁業再開に重要な漁協の業務を復旧するための備品を提供する支援を開始しました。緊急物資提供などの支援を実施する中で、漁協スタッフなどと相談を重ね、地域の主要産業である漁業復興については、政府やほかの援助団体の動きもあるなか、PWJとしてできることは何か、やるべきことは何か、検討を続けました。
たとえば、もし震災で失われた漁船の再造船を手掛けるとすると、1隻あたり数百万円~数千万円の費用がかかるので、PWJが支援できる漁業者の数はかなり限られたものになります。また、船が完成するまで、当時は長ければ2~3年を要してしまう状況だったため、その間の生活をどうするのかという課題も残りました。そうしたなかで浮かんできたのが、ワカメ養殖の支援でした。
南三陸東北
「ワカメは11月に仕込んで、翌年の3月に採れる。その間、あまり手もかからない」
成長が早く、ホタテやカキなどの養殖に比べて死滅というリスクも少ないワカメ。翌春の収入を元手に、あるいはその収入を見込んで、漁業者はさらに生活再建へ 進んでいくことができます。PWJはワカメの種付けの支援作業を支援しました。
「ワカメは、歌津地区の主産業だった。震災前はワカメの種はほかの地区から購入していて、自分たちで種付けの作業をすることはなかったが、震災後は、13ある浜のすべてで、種付けの作業から行うことにし、準備を始めた」
「そのワカメをただ売ったんでは付加価値がない。この辺では、昔からワカメの塩蔵加工をして出荷するのが当たり前。ゆでて塩蔵加工して出荷すれば付加価値が付く。震災前と同じようにワカメを塩蔵加工するための機械は高価だったが、PWJの支援で導入し、再建ができた。当時はワカメの売値も上がり、生活の足しにもなった。何より、震災1年目という時期だったので、『これからも漁業やっていこう』という気持ちになった」
「ピースウィンズの支援は、みんながひとつになれるきっかけでもあった」
千葉さんたちは、震災直後からPWJの支援を受けることを決め、どのようにすれば漁業者がいち早く漁業を再開できるのか、組合はどのような環境を提供できるのか日々話し合いを重ねてきた。震災後、避難生活を送りながら仕事がなくなった漁師たちには、国の事業としてガレキの処理、撤去作業が日々の生活の糧として与えられた。
「どうにかして前の歌津の海の風景に早く取り戻すことができないか」
ワカメは、他の養殖などの仕事と比べ、地域の女性の雇用・収入の確保にも効果があります。ワカメは収穫後、葉、茎(茎ワカメ)、芽株(メカブ)などの部位に分けられるほか、成育状態や品質により、20以上の等級に分けられることもあります。この選別作業が主に女性によって行われているのです。震災後の支援でも女性や子どもに対する効果が重要視されるようになってきていて、この点からもワカメ養殖はふさわしいものでした。
東北東北
すべて放射能検査をして心配はないが、風評被害は深刻
PWJの支援が効果を上げる一方、漁協や漁業者にとって、なかなか解決が難しい局面もありました。その一つが、カキの処理場の再建ともう一つが放射能に関する風評被害でした。
「ワカメもほかの水産物もすべて放射能検査をしていて心配ないんだけど、『ほかにないなら買うけど、他の産地のがあるなら、そっちのを買えばいいや』となってしまう。たとえば、市場でせりに参加する買受人がワカメを100買ったとする。関西方面などで売ろうとしても40~50残ると、次は買う量を50にしたり、買い付けをしなくなったりする。すると、販売価格が下がる。これは一例ですが、現状なんです」
「3年たってみて、復興は、早いと思う。震災の規模はあまりにも大きいし、漁港の整備は普通のときでもすごく時間がかかってたから、もっと時間がかかると思ってた。防潮堤に関して、安全性をとるか、景観をとるかの議論があるが、『早く復旧してくれ』という声が強い」
早い段階で、漁業の仕事ができるようにしてくれたことが大きい
「今、漁港の整備が進んでいるけど、なかなか追いつかないところがある。たとえば街路灯が何もないと、明け方とかの作業は安全面で心配がある。地元の人じゃないと思うけど、水産物の盗難も結構ある。そこで、PWJの支援で街路灯の整備を進めてもらった」
「PWJの支援は120点。南三陸町内でも歌津地区の支援に入ってくれるところは少なかった。早い段階で、ワカメの種付けとか加工のための機械とかの支援をしてくれた。これで、みんなが浜で漁業の作業ができるようになった。これが大きかったね」
▼関連リンク
震災3年:支援を振り返る1/ 前編「灯油、ストーブ、学用品…本当にうれしかった」(2014.3.11)
震災3年:支援を振り返る1/後編 「PWJは『ダメ』とは言わない。常に『やってみます』と」(2014.3.11)

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