ピースウィンズ・ジャパンは、紛争や災害などの脅威にさらされている人びとに対して国内外問わず支援活動を行うNGOです。

地域復興・教育

Reconstruction

2013.10.24

コミュニティと地域経済再生へ -伝統工芸を支援-

日本 地域復興・教育

2011年3月の東日本大震災は、地域に根差した伝統工芸にも大きな影響を与えました。工房や自宅が被災しただけではなく、仕事の基盤となっていた地域の道路網やコミュニティが寸断されたために販路を失ったり、震災後の消費の落ち込みによる影響を受けたりしました。ピースウィンズ・ジャパンでは、伝統工芸産業の復興を通して、地域経済の活性化とコミュニティの再生を図るため、被災地をはじめとした東北6県の職人を対象に、伝統工芸の製品開発に関わる支援を行いました。この取り組みによる作品を披露する発表会が2013年10月22日、東京・代官山で開催されました。
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作品発表会では、地域ならではの長い歴史の中で熟成された生活文化や精神風土とともに生き続けた伝統の中に、現代生活に合わせた新しさを組み込んだ作品が、「てしごと」の技・精神・心を受け継ぐ職人の思いとともに発表されました。参加した職人のみなさんに、作品に込めた思いなどを聞きました。

山形県米沢市の老舗の機屋、株式会社新田の5代目、新田源太郎さん。創業から129年目を迎えます。
通常は、和装用として生地を提供していますが、今回の展示では、紅花染めのモダンな洋装を発表しました。
新田さんにとって「伝統」とは、「かつてあったもの」ではなく、「いま」のことだそうです。「いま」を紡ぐからこそ先代が築いた文化や価値が続いていく。「洋装を手がけることも、大切なものが続くための新たなきっかけであるならば受け入れるのです」と、柔らかに微笑されていました。
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▲紅花染め。絹100%ならではの自然で上品な光沢感と、しなやかな質感を特徴としています。
株式会社新田 新田源太郎さん  
宮城県仙台市、「熊野洞」のアーティスト、熊野聡さんは、震災で工房やギャラリーにも被害を受けたものの、「周囲の応援を励みに、てしごとを再開することができた」と話します。今回は、“家に居場所がなくなりつつある”現代の男性が、手元において使えるような小ぶりの手箪笥を、というお茶目なコンセプトイメージを想定して作った仙台箪笥を出品。熊野さんは、仙台箪笥の木工技術を活かした創作オルゴールも制作しています。
環境に配慮し、素材はすべて天然木。かんなくずや木の粉を原料に、本物と見まちがう巧妙な創作ケーキのオルゴールを手にしたお客様が笑顔になることが何よりの喜びだそうです。
「“つくる”ことは本当に幸せです。毎日わきでる新しいアイデアを形にしていくのに、時間はいくらあっても足りません」と話してくれました。
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▲ケヤキ(宮城県の県木)の木目が美しく浮かび上がる仙台箪笥と、創作ケーキのオルゴール。
㈱熊野洞 熊野聡さん
「岩手県から参りました、泉山正男。名前のとおり、正しい男です」
と、発表会冒頭の挨拶で会場を沸かせたのは、まもなく80歳を迎える、岩手県二戸市の鳥越細工職人、泉山正男さん。25歳の時から竹細工の製作に従事し、指導者としても匠の技の普及にとりくんできたそうです。
今回は、現代の女性がコンビニエンスストアでおむすびを買ったときに収納できる竹かごなどを展示。昔は山菜やびく(魚を入れる器)として活用していた竹かごですが、時代のニーズにあわせて商品の幅を広げています。
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▲竹工芸 泉山正男さん
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▲半世紀以上もの間、竹細工に従事している“職人の手”
震災と原発事故で、大きな痛手を受けた福島県からは、奥会津昭和村振興公社で「からむし織」に携わる本名民子さんが、参加しました。会津地方の同村に600年前から伝わる「からむし織」。優れた吸湿性や速乾性のある原料のからむし(イラクサ科の植物)は、最高級の織物の材料と評されています。同村出身の本名さんは、着物の需要が少なくなった現代の活用のため、肌にふれ、体にまとって気持ちのよい素材の寝具としてからむし織の作品を手がけました。
からむし織の何よりの魅力は、織技術そのものだけでなく、からむしの畑を耕し、草を刈り取り、糸をつくり、織り上げるまでのすべての工程があることだそうです。世代を超えた人と人とのつながりや、土と太陽の恵みを感じながら先人の知恵を紡いでいく、そこに確かな感謝と喜びがあるそうです。
「福島は、震災後から今も大変な思いをしている人がたくさんいます。それでも、少しずつ前を向いて進んでいきたいのです」としっかり前をみすえて話していました。
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▲㈱奥会津昭和村振興公社 本名民子さん
ピースウィンズは、震災から2年半あまりが経過する被災地などで、コミュニティ再生を目的にさまざまな支援を続けています。
なお、今回の作品発表会で披露された作品は、2013年10月23日から11月5日まで、東京・銀座の銀座三越で展示販売されます。
報告:山下智子(コミュニケーション部)
プロジェクト協力:暮らしのクラフト ゆずりは / ライフスタイルプランナー 北河原純也
対象となった14の伝統工芸:
青森県:こぎん刺し/(有)弘前こぎん研究所、裂き織り/南部裂織保存会、津軽塗り/遊工房
岩手県:ホームスパン/中村公房、浄法寺塗り/滴生舎、すず竹細工/淵州(泉山正男)
宮城県:仙台箪笥/㈱熊野洞
福島県:からむし織/奥会津昭和村振興公社
秋田県:桶樽/㈲樽冨かまた、カバ細工/合資会社経徳製作所、曲げわっぱ/㈲栗久
山形県:しな布織/羽越しな市振興協議会関川しな織協同組合、紅花染め/㈱新田、刺し子/創匠庵
【イベント/銀座三越 展示販売会】
三越デザインウィーク「心地よい生活をデザインする―東北のてしごと」
日時:2013年10月23日(水)-11月5日(火)
場所:東京 銀座三越 8F ジャパンエディション

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