ピースウィンズ・ジャパンは、紛争や災害などの脅威にさらされている人びとに対して国内外問わず支援活動を行うNGOです。

2012.6.22

【3回連続ルポ】小さな命の危機 原発被災犬の保護事業(1/3)

日本

2011年3月に発生した東日本大震災および福島原子力発電所事故により、被災地域では被災ペットの自宅への引き取りや継続飼育が困難な状況が続いています。
ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、被災者ならびに被災犬の生活の回復に向けた対策をパートナー団体・NPO法人ジャパンドッグスタンダード(JDS)を通じて実施しています。
現在、JDSは被災犬の飼育管理施設「ドッグビオ那須高原」(2012年6月に品川、同年9月に築地へ移転予定)を運営し、保護した被災犬の管理と、必要に応じた里親探しを行っています。
このたび、3回連続ルポとして、JDS理事長 岸さんによる活動の進捗状況を報告します。

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被災犬を福島の飼い主に返す様子

「置き去りペット大量発生事件」

2011年3月11日、東北地方を襲った未曾有の災害の中、津波、地震という一時災害から難を逃れた小さな命たちにさらなる危機が迫っていました。
それは福島第一原発事故の発生です。
ほっと息をつく間も無く、当初は原発から3km以内に居住する住民を対象に避難が指示され、その対象領域はまたたく間に拡大していきました。
避難住民に当時の状況を尋ねると、「町内放送で自衛隊が迎えに来るから即刻避難をするようにと言われました。可愛がっている愛犬が心配で“犬は連れていけますか”と避難を促している人物に聞くと“2~3日で戻れるからそのくらいの水と餌だけ置いてきてください”と言われたので、それだけ置いてきました。」
これが前代未聞の“置き去りペット大量発生事件”の発端でした。
住民たちが避難してから2~3日はおろか、1週間経っても帰宅の目処は立ちませんでした。
自家用車は自宅においたまま避難したので、助けに行こうにも移動手段はなく、たまたま自家用車で避難できた住民の車もガソリン供給が止まっていて移動は出来ませんでした。
やむなくペットを置いてこざるを得なかった飼い主たちは、自身が避難先で安全を確保されたことに対する安堵感の拡がりと比例するように、ペットの生存確率が下がってきていることを理解していました。
渇きと飢えで苦しんでいることは容易に想像がつきます。
時間の経過と共に絶望感が増し、10日を過ぎる頃には、家族間で愛犬の話題に触れることもタブーになっていきました。

救出するため、自ら現地へ

JDSは“日本の犬の飼育状況をより良くしていく”事を目標に、2010年に立ち上がった比較的新しい団体です。震災発生直後より“被災地の犬に対して何か起こせるアクションはないか”とメンバーの誰もが思っていました。そのような中、連携している任意団体を通じて3月20日頃“置き去りにせざるを得なかったペット達がいる”“猫の救出をしている一部個人はいるが、犬が捕まえられない”“救出に行ける車、ガソリンといった物資がない”との情報が寄せられました。
“なんとかして救出できないものか”交流のある犬の保護団体に片端から連絡をとっていきました。しかし返ってきたのは“他の地方はともかく、福島は原発の状況が悪いのでリスクを考えると救出に行くことは出来ない”という返事ばかりでした。“これはもう自分たちで直接救出に出向くしかない。”これがメンバーたちの出した結論でした。
すぐにJDSと任意団体が合同で緊急の救出作戦会議を実施しました。
ガソリンの供給の目処がつく段階で救出作戦を実施することを確認しました。
当て所なくさまよう犬を救出することも大切ですが、不慣れな地、数多く襲ってくる余震、携帯電話が通じない事を考えると、予め救出するべき犬の所在地が判っていた方が良いとの判断から、作戦実行直前まで候補となる犬の飼い主とコンタクトを取るべく努力を続けました。

現地で知った被災犬の状況

ガソリンの準備が出来た3月28日未明、東京世田谷を福島へ向けて出発しました。
被爆リスクを考えると屋外での作業時間は極力少なくすべきとの考えや、日没後の作業はリスクが大きすぎるとの判断から現地での作業は11時~16時前までと決めて救出作業を実施しました。
合計6頭を確保して現地を離脱し、帰京しました。
結果、屋外で飼育されていた犬は生存確率が高く、対して室内犬は死亡している確率が高いことを知りました。
屋外犬は雨や雨水の染み込んだ土を食べて水分を摂っていたようで、回収後に犬たちがした便を観察するとほとんどが土や砂でした。

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1回目の被災犬救助の様子

救出した犬のうち、庭に繋がれていなかった放浪犬の飼い主を探すため、救出時の動画や救出犬の画像を動画投稿サイトYOUTUBEやペットレスキューサイトに掲載すると、“原発地域の犬を救出に行っている連中がいるらしい”と話題になり、短期間にアクセス数が増加し、救出時の情報が拡散されました。
この効果として、数頭の放浪犬の飼い主が見つかっただけでなく、他団体からの原発地域置き去り犬救出チームが急増しました。
時同じくして、我々も現地の状況の酷さを目の当たりにしたことで “今後の活動を継続する上で独力では人的にも経済的にも困難”との判断をしました。
その後、4月初旬に再度現地入りし、合計15頭を保護するも、“これ以上の直接救出は犬の保護管理・受け入れ体制を整えてからでなくてはかえって犬を悲惨な状況に追い込むことになる”との判断から、今後の直接の現地位入りは他団体や個人に任せ、今後の保護活動体制の見直しを図ることにしました。

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2回目の被災犬救助の様子

>>第2回へ続く

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