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私たちの活動

コミュニティ再生は子どもから:ふるさと学習会に込めた思い

宮城県南三陸町で、ピースウィンズ・ジャパン(以下、ピースウィンズ)がサポートを続けてきた「ふるさと学習会」(ふる学)開始から1年が経ち、開催回数も50回を超えたことはすでにご報告しました
今回は、開始当初からふる学にかかわってきたピースウィンズスタッフの目を通して、この取り組みの意味やコミュニティの変化についてお伝えしたいと思います。
■走り回る子どもたちの姿が親の会話につながる
-ピースウィンズ東北事業 事業調整員 鈴木豪(岩手県一関市出身)

suzukitakeshi被災地の現状を見た第一印象は、「子どもたちの遊び場がない」ということでした。子どもたちのために何かできないか、子どもを通して町の人のつながりが戻れば、というのが、この取り組みへの思いです。
校庭は仮設住宅で埋まっています。保護者も子どもたちの安全に敏感になっているので、子どもだけで友だちの家へ出掛けるようなこともほとんどなくなりました。もちろん、海のそばで子どもだけで遊ばせることもできないのです。
 
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写真左:地域の神社を訪ねる子どもたち(2012.08.02 神社見学&きりこ作成)
写真右:草むらのなかには震災で被害を受けた住宅の土台がそのまま残る
これまでのふる学の中で、一番印象的だったのは、社会人アメリカンフットボール「Xリーグ」の強豪、富士通フロンティアーズの選手を先生に迎えて実施した「スーパー鬼ごっこ」(フラッグフットボール体験教室、2012年7月29日)でした。
大きなベイサイドアリーナで思いっきり走り回る子どもたち
大きなベイサイドアリーナで思いっきり走り回る子どもたち
会場は、南三陸町のベイサイドアリーナ(同町総合体育館)。小学生たちにとっては、日ごろほとんど使う機会のない大きな体育館です。ここで、子どもたちは、思いっきり走り回りました。まるで、日ごろのうっぷんを晴らしているみたいに感じました。
保護者の方からは時々、「こないだのふる学、子どもも楽しかったみたい」と話し掛けられます。家での会話にも出ているんでしょうね。友だちを誘って一緒に参加したい時は、そのために親同士が電話で連絡し合うことになり、それが会話のきっかけをもたらしています。2013年5月に実施したアンケートからも、そうした効果が裏付けられています。少しずつですが、コミュニティの再生につながっていると感じます。
子どもたちから「釣りがしたい」といった声が上がるようになりました。同町では以前、合併前の旧志津川町の小学校で「ふるさと学習」が行われており、保護者から「昔は化石の見学をやっていたんです」と教えてもらうことも。できるだけ地元主導で進めるためにも、こうした要望やアイディアも企画に取り入れました。一方で、地元の人がやりたいと思うことを取り上げるだけでなく、その企画の効果や役割を伝えるための、企業など町外の方との橋渡しも重要です。それが、PWJや、町外出身の自分の役割ではないかと考えながら、サポートを続けています。
■「町の復興を託すのはこの子たちなんだ」と
-ピースウィンズ東北事業 事業調整員 西城幸江(宮城県南三陸町出身)

saijosachie私は、南三陸町の出身です。同級生と会ったとき、よく「あのとき、あんなことがあったよね」と話すテーマが、ふる学でした。ところが、ふる学が中断され、ここ5年くらいは「ふる学なくなったねー」と話しており、ふる学を復活させられたら、とずっと思っていました。
震災後、多くの企業や個人の方が復興支援のボランティア活動に参加してくれる姿をみてきました。ただ、落ち着くにつれ、ちょっと難しい状況も見えてきました。以前なら地元の人たちが仕事として行っていた農作業や漁業関係の仕事にボランティアとして参加しようと考えてくれる人たちも出てきました。地元と支援者の双方が心から良かったと感じ、復興支援を息長く継続していくために、支援の形を切り替える時なのではと思いました。そして、「ふる学なら、その形をつくれる」と。
支援を考えていただいている企業の方に「子どもたちと直接、接してみませんか」「お仕事のお話しを子どもたちにしてみませんか」と提案してみました。これだけ深く地元や子どもたちと触れ合える機会は、企業にとっても貴重ではないかと考えました。地元の実情やNGOの復興支援についても、より深く理解していただく機会になると思ったのです。
本物の宝石に目を輝かせる参加者。「これ、いくらになる?」と大人たちの予想を超えた質問も
本物の宝石に目を輝かせる子どもたち。「これ、いくらになる?」と
大人たちの予想を超えた質問も(2012年9月30日、「ダイヤモンドの旅」)
被災した町で子どもたちは、衝撃的な光景を多くみています。ふる学を通して、色あせた中でもピリっと光る町の良さを知ってほしい。そして、南三陸にないものや、地元と都会のにおいの違いも感じてほしい。視野を広げて、大学進学したり、一度町を出ても地元の仕事をしたいと戻ってきたりしてほしい。
子どもたちが写真を撮り、学習後に新聞を制作する取り組みも。「そのとき感じたこと、そのときの写真や文字を、そのまま記録として残しておいてあげたいから」と西城。震災後、避難所にいる子どもたちを見ながら思いました。自分のころは、ふる学以外でも、おばあさんについて町を歩き回ることも多かったので、知っている人がたくさんいました。津波が来て高台に避難したとき、知っている人がいなかったらどんなに不安か、と。何人かでも知っている人がいたら、気持ちが変わりますよね。「ふる学であったことがある」でも全然違う。そういうきっかけをつくりたい。
大人たちには、町の将来は、この子たちに託すんだよと訴えたい。たとえば、今、議論されている高台移転でも、「そこに住むのは、この子たちだよ」と。ふる学などを通じて、大人と子どもたちと向き合う場面を提供できたらと考えています。
 

子どもたちが写真を撮り、学習後に新聞を制作する取り組みも。
「そのとき感じたこと、そのときの写真や文字を、
そのまま記録として残しておいてあげたいから」と西城。

南三陸町教育委員会は、町内各小学校の6年生全員を対象にした「ふるさと学習会」を再開することを決め、2013年6月に第1回が実施されました(2回目は9月に実施予定)。ピースウィンズがサポートを続けてきたふるさと学習会(2013年5月より、南三陸復興推進ネットワーク主催)は、9月から、「わらすこ探検隊」として実施されます。
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2012.7.30 南三陸町に行って来ました
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