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私たちの活動

震災の記録づくり ―広田町の記録―

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、岩手県陸前高田市広田町の自主防災会と連携し、震災の記録づくりを通した防災への取り組みを行っています。
昨年10月20日にPWJが呼びかけた第一回自主防災会議では、震災後初めて、広田町の自主防災会のメンバーが集まり、震災直後の自主防災会としての対応を振り返りました。
(自主防災会議のようす:https://global.peace-winds.org/activity/report/tohoku/489
その後も、震災の経験を後世にどう残すべきかについて、議論が重ねられました。PWJは現在、広田町の自主防災会とともに、震災の記録を冊子にまとめる作業を続けています。
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記録づくりについての話し合い
自主防災会のメンバーとPWJで、「広田町記録作り委員会」を結成しました。
その中からさらに、編集や連絡を主に担当する2名を選出し、「事務局」をつくりました。
住民へのアンケートや聞き込み調査などを実施するためには、各地区の自治会長の理解や協力が必要です。
委員会のメンバー全員が、それぞれの地域で自治会長や住民に説明を行ったことで、本事業について多くの理解を得ることができました。
広田町全住民1,106世帯のうち、834世帯(75%)の住民にアンケートに協力いただき、93名に聞き取り調査、13名に個人の記録を作文にしてもらうことができました。
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現在の広田町小友地区のようす
「住民と個別に話をすれば、みんな震災の体験を各々に話してくれますよ。」
今回の冊子を作る過程で、いまだ思い出すだけで辛いはずの震災の経験を語ってくださった、住民のみなさん。
率先して本事業に取り組んでいる自主防災会のメンバーは、石碑や役場にある冊子の記録ではなく、町民のために、各家庭に記録を残したいと考えました。
その背景には、「絶対にまた震災はやってくる。だから今回の経験を決して忘れてはいけない。後世に語り継いでいかなければならない。」という強い使命感があります。
事務局の長野さんと砂田さんは、冊子作りに至るまでを振り返り、「もっと早く、震災直後にこのようなアンケートを行ってもよかったのかもしれないと感じています。時間が経過するにつれて、震災のことがだんだんと記憶から遠のいてしまい、大惨事を忘れてしまいます。震災直後の2011年の夏、コミュニティーセンターなどを中心に、どうやって震災の記録を残すのかについて話をしていましたが、誰がどうやってまとめるのか決まらず、結局何もしないで終わってしまいました。もっと早く集まっていれば、より詳細な体験談の記録ができたのかもしれない。」と述べています。
さらに「この経験を後の世に、子に孫に、よりよい形で残していきたいです。」と、意気込みを語ってくれました。
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記録作り委員会の長野さんと砂田さん
真剣な眼差しで、冊子のドラフトを読み進めるお二人を目の前に、生々しい経験談を読むことが辛くないのだろうかと疑問に思いました。
しかし、震災の経験談は、辛いだけでありません。
辛い日々の中でも、励ましてくれた人たちがいたこと、これまで当たり前に送っていた何気ない日常がどれだけ幸せなのか思い知らせてくれたこと、人々の助け合いに感謝したこと、生き残るということ、そして、生き続けることの意味を教えてくれたなど、将来への希望のメッセージも多数記されています。
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記録作り委員会の長野さんと砂田さん
「この冊子のために、たくさんの住民の方々が写真や記録を提供してくださったので、自分の地区周辺の記録を画像や文章で残すことができます。話に聞くのと、文章で読むのとでは、受け取り方が違うでしょう。きっと、3月11日当時の記憶がよみがえり、色々と思い出すのではないでしょうか。」
長野さんと砂田さんは、冊子作りの作業をするなかで、安否確認するだけで精一杯だった震災直後や、長期に渡る避難所での生活、余震が続き大火災を経験した一方で、子どもの無邪気さに大人が救われ、近隣の家庭に食事や毛布を分けてもらい生き延びた人たちや、自衛隊やNGO/NPO、ボランティアの支援に支えられたこと、そして、世界各国からの励ましの声のおかげで、踏ん張る事ができたことなどを思い出していました。
災害は忘れた頃にやってくるから、心構えとして記録を残さなければならない。悲劇を繰り返してはいけない。それが、自主防災会に与えられた課題であるという思いを強く胸に抱いて、冊子作りに精力的に取り組まれたお二人は、この冊子の活用について、次のように述べています。
「10人に聞けば、10通りのストーリーがあります。広田地区の住民全員に読んでもらい、“これくらいの地震なら逃げなくても大丈夫なはずだ”と思わないでほしい。世代が変わっても、次の代まで代々この冊子を受け継いでいってもらいたいです。」
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写真:記録作りのようす
報告者:佐藤 真央

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