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2014.4.28

【イラク】145名の校長・副校長が学校運営能力向上トレーニングを修了

イラク 海外人道支援

ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)が昨年5月に現地教育局の要請を受けて開始したクルド人自治区ドホーク州における学校運営能力向上トレーニング事業が、ついに完結を迎えようとしています。
昨年10月の現地活動ルポでお伝えしたとおり、この事業は、クルド人自治区内ドホーク州において25名の校長・副校長を学校運営能力向上トレーニング(以下、トレーニング)のマスタートレーナーとして養成したのち、マスタートレーナーがそれぞれ所属する郡あるいは地区の校長・副校長に自らトレーニングを実施し、知識を移転するものです。
トレーニングの内容は、昨年9月下旬に行われた国際専門家によるオリエンテーションでのアンケート調査や意見交換の結果をもとに決定されました。学校運営、学級運営、年間授業計画、コミュニケーション手法、効果的な指導方法などがトレーニングのトピックとして選ばれました。これらのトピックについての参加者の知識や理解度を確認した上で、国際専門家がトレーニング教材を作成し、昨年11月から、いよいよトレーニングが実施されました。
トレーニングで講師を務めた国際専門家は、参加者の積極的な発言や議論を奨励し、他の参加者を受講者に見立てたトレーニング実習を行う等、トレーニングは終始双方向的に進められました。国際専門家によると、こういったトレーニング手法は「経験を通した学習」と呼ばれ、議論や内省を通して新しい知識がしっかりと身に付くのだそうです。
トレーニング参加者からは、「自分たちが学校運営で日ごろ直面している問題を他の候補者と共有するだけではなくその解決策を皆で議論し、また解決するためのスキルを習得できて嬉しい」、「長時間のトレーニングにもかかわらず、まったく飽きが来ず、もっと学びたいという気持ちになったのは久しぶりだ」といった感想が聞かれ、トレーニングの充実ぶりが伝わってきました。

修了証授与修了証を授与されたマスタートレーナーと国際専門家(前列中央および中央右)現地教育局担当者(中央左)

トレーニングに参加した25名の校長・副校長には、国際専門家による習熟度テストの後にトレーニング修了証が手渡され、25名全員が晴れてマスタートレーナーとして認定されました。その後、各マスタートレーナーは、学んだ内容を各々仕事に活かすのみならず、マスタートレーナーが所属する郡あるいは地区の校長・副校長に自らトレーニングを施してきました。今年4月に国際専門家が訪問した際には、マスタートレーナーからトレーニングを受けた合計120名の校長・副校長が、国際専門家の前で一人一人学んだ内容を発表し、その成果を披露しました。国際専門家は必要に応じて助言を与え、参加者からも積極的に質問が上がるなど、ここでも活発なやりとりが見られました。
そんな中でも、マスタートレーナーからトレーニングを受けたバクティヤール・アズィズさん(33)は特に熱心に発言していました。バクティヤールさんは少し興奮気味に、PWJスタッフに喜びを伝えてくれました。「私たちは皆、このようなトレーニングを必要としていたのです。このトレーニングのおかげで、以前よりも気持ちに余裕を持って、常に楽しみながら仕事ができるようになりました。今後は、今回学んだことを他の教員に積極的に伝えていきたいと思っています。」

バクティヤールさん
国際専門家(左)の助言を受けながら楽しそうに発表するバクティヤールさん(中央)

同じくマスタートレーナーからトレーニングを受けたジャリール・アブドゥラーさん(50)はこう語ります。「このトレーニングを通して、教師は生徒のみならず社会全体に影響を与える立場にあるのだということを再認識しました。このような重要な立場にあるのですから、私たちは今回学んだことを土台として、今後も自己研鑚に努めねばなりません。」

ジャリールさん
ジャリールさんの発表の様子

マスタートレーナーからトレーニングを受けた先生たちからこのように高評価を得られたのは、マスタートレーナーたちの努力があってこそです。マスタートレーナーの一人、アンター・イスラムさん(36歳)はこのトレーニングをこう振り返ります。「トレーニングを受講し始めてすぐに、仕事に対する意識が変わりました。トレーニングでは学校での振る舞い方や生徒との接し方など、効果的なスキルを身に付けただけではなく、そこに至るまでの根本的な認識そのものを学んだのです。例えば、生徒の心理を私たち大人のものとは違うものとして理解したことで、より効果的に生徒と接することができるようになりました。」

アンターさん
アンターさん(中央右)国際専門家(中央および左から二番目)とアンターさんがトレーニングを施した先生たち

この事業では、マスタートレーナー25名と、彼らからトレーニングを受けた120名の、合計145名の校長・副校長が、学校運営能力向上のためのトレーニングを修了しました。前述の感想から見て取れるように、この145名の先生たちの学校では、すでに良い変化が次々と起きています。PWJの事業としてはここで完結しますが、今後も今回のトレーニング内容が州内の校長・副校長に伝えられ、学校運営能力が向上することで、ドホーク州全体、ひいてはクルド人自治区全体の教育の質の向上につながっていくことを願ってやみません。PWJは今後もトレーニングが実施されていくよう、現地でフォローアップを行っていきます。
報告:船山 静夏(イラク駐在)
※本事業は、外務省「NGO連携無償資金協力事業」による資金や寄付金などにより実施しています。

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