ピースウィンズ・ジャパンは、紛争や災害などの脅威にさらされている人びとに対して国内外問わず支援活動を行うNGOです。

海外人道支援

Overseas

2004.3.23

キルクークで巡回診療事業を開始

イラク 海外人道支援

豊富な原油埋蔵量を持ち、石油権益の帰属と地域の安定化がイラク復興のカギをにぎるイラク北部の大都市キルクーク。この地域の国内避難民の問題は人道援助団体をはじめとする関係者の間で大きな課題と認識されながら、治安などの複雑な事情のためにNGOなどによる援助があまり届かない状況に陥っていました。PWJは当地での支援を継続してきましたが、国内避難民の困難な生活ぶりを考慮し、3月10日から避難民を対象とした巡回診療事業を開始しました。
過去のイラク政府の政策、とくにフセイン政権による強圧的なクルド人政策のため、多くのクルド人が、キルクーク市やその周辺などの旧中央政府側地域からクルド人自治区へ、国内避難民となって移動・流入する状況が続いてきました。イラク戦争によってフセイン政権が崩壊した結果、旧中央政府側地域とクルド人自治区との行き来が可能になり、特に2003年11月以降、キルクークへ帰還する国内避難民が増えてきました。
しかし、クルド人がもともと住んでいた町に戻ったとしても、必ずしも元の生活に戻れるわけではありません。彼らが以前住んでいた住居には、イラク南部などからのアラブ人家族が住んでいるためです。フセイン政権下におけるアラブ化政策の影響です。したがって、多くのクルド人が故郷への帰還を果たしている一方、そうした帰還民は、テントや簡易住宅での不自由な生活を余儀なくされているのが現状です。
キルクークの治安情勢はかなり悪化しており、NGOなどが支援活動を届けることは容易ではありません。しかし、帰還民が困難な状況のなかで生活を続け、現状へのフラストレーションが高まれば、クルド人とアラブ人のみならず、同市に住むもう1つの民族であるトルコメン人を加えた民族衝突の火種にもなりかねません。また、石油権益などもからむ当地の情勢は、イラク全体の政情にも大きな影響を及ぼしかねません。
PWJは、スタッフの安全確保を最優先に考え、機動力は抑えながらも、現地関係当局や他人道援助機関等との度重なる調整の末、本支援事業の開始に至りました。キルクーク市東端にあるスタジアム内とその周辺には、現在、約500家族、の帰還民が生活しています。巡回医療サービスの対象者数は約3000人ですが、今後予想される帰還民の増加にも対応していく予定です。また、初期医療サービスの遅れによって、帰還民の健康に重大な問題が起こらないよう、きめの細かい支援を心がけていきます。
PWJは、巡回診療だけでなく、結核・胸部疾患病院の改修工事や医薬品・医療機材の提供、給水支援なども行い、クルド人帰還民に限らず、キルクーク市およびその近郊住民全体に対する復興支援を行っています。これら復興支援を通じて、イラク社会全体の安定化にも貢献していきます。
PWJによる給水タンク設置作業
国内避難民の女の子 10カ村への給水タンク設置完了
2004.03.23
PWJは1996年以来、イラクで支援活動を続け、基礎的な生活環境整備のため水道関係の支援にも力を入れています。イラク北部アルビル県マクムール地区の10カ村を対象に2003年末から進めてきた給水タンク設置事業が、このほど完了しました。
マクムール地区は、アルビル県南西部、クルド人自治区と旧中央政府側地域との軍事境界線上に位置しています。クルド人が多く住む地域であるため、クルド人を冷遇した旧フセイン政権時代から公共施設に対する十分な維持管理がなされてきませんでした。また、この地域は地下水も含めて水源に乏しく、水の供給も週に1回程度。チグリス川からの水をくんで供給する給水車が1台ありましたが、とても十分とはいえませんでした。
そこでPWJは2003年末より、マクムール地区カラチ行政区の10の村々に対して、給水タンクの設置を行ってきました。設置にあたっては、国内避難民の村への帰還など人の動きに合わせて、現地関係機関や他の人道援助機関と調整を行いました。3月はじめには、すべてのタンクの設置が完了し、計約2000人の人びとが水の不安を解消することができました。イラクで大きな課題となっている国内避難民の帰還問題も視野に入れた取り組みで、PWJとしては、住民たちにイラクの復興を実感してもらえる活動になれば、とも考えています。
PWJによる灯油の配布
冷え込む山間部で灯油配布継続
2004.03.23
イラク北部は冬期、山間部をはじめとして氷点下10度を下回る寒さになるほど冷え込みます。旧フセイン政権の弾圧による被害者、なかでも女性たちらは弱い立場にあり、厳冬のなか、暖房用の灯油を手に入れることも困難です。イラクで1996年以来、社会的弱者の支援に力を入れてきたPWJは、2003-2004年の冬も、イラク北部で越冬用の灯油を配布しました。
この冬、とくにPWJが懸念したのが、スレイマニア県ピラマグーン地域。この地域は冷え込みが厳しいうえ、旧フセイン政権が1988年に行ったクルド人掃討作戦(アンファル・キャンペーン)によって夫を連れ去られた女性や、障害者が数多く生活しています。
社会的に弱い立場にあり、支援を最も必要としている人たちへの支援をPWJは優先しています。2004年1月末から3月初めにかけて、ピラマグーン地区の326人に各200リットル、計6万5200リットルの灯油を配布しました。灯油を受け取った人たちには、安堵の表情が浮かんでいました。

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