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「イラク危機が現実のものとなりました」 【イラク北部・クルド現地報告 3月20日】

空爆が始まった5:40分ごろ、スレイマニアでは雨が断続的に降り続いていました。雷が1-2分おきに鳴り響き、戦闘機の通過の音かと間違えるほどでした。
最初の空爆はバグダッド周辺に行われたと伝えられていたため、爆撃の音や煙なども、スレイマニアやアルビルなどでは、確認できませんでした。
 
ピースウィンズ ・ジャパンのスタッフは、アメリカがフセイン大統領の国外退去を求めた期限の午前4:00の前から衛星放送のBBCを見ながら状況を注視していました。「当初、空爆開始は20日夜になる」と報道されていましたので、空爆開始の一報に驚かされました。クルド人のスタッフたちは、BBCに加えて、カタールの衛星テレビ「アル・ジャジーラ」(アラビア語での放送)などで空爆開始を知ったようです。
街、市民の表情
アメリカが武力行使の方針を明らかにした17日、その後ブッシュ大統領の最後通牒があった18日ごろから、市民の買いだめなどの動きが目立ってきていました。缶詰やビスケットなど保存のきくものが売れていました。
スレイマニアでは18日ごろから、より安全と思われる北部の村へ避難する人たちが増え始め、シャッターを下ろす店も増えてきました。
20日は、メインストリート沿いの商店では8割前後、そのほかの道路沿いや市場では9割以上の商店がシャッターを下ろしていました。人通りも普段に比べて格段に少なく、いつもは人でごったがえす市場も閑散としていました。
20日には、クルド人自治区と中央政府側との間のチェックポイント(検問所)、周辺国との国境のすべてが閉鎖された模様です。そのため野菜などの値段も急騰し、2日前に1キロあたり4ディナールだったリンゴが5ディナールに、同2~3ディナールだったオレンジが5ディナールに上がるなど、物の値段が2倍から3倍くらいになっているようです。買い物に来たものの、値段を聞いて引き返す市民の姿もありました。
ドルと現地通貨ディナールの交換レートも、連日大きく変動しています。2日前には1ドル=8.5ディナールだったものが昨日は7.5ディナール、今日は7ディナール前後で動いているようです。
 
市民の間には、フセイン政権が再び、化学兵器を使うのではないかという不安が強いようで、窓やドアをふさぐために18日から19日にかけて、透明のビニールシートがよく売れたとのことでした。備蓄の食料品にかぶせる人もいるようです。
中央政府側からの国内避難民
中央政府側と自治区との境界線では、17日ごろから連日、数百人単位の人がチェックポイントを超えて自治区内に避難してきていました。
しかし、20日にはすべてのチェックポイントが閉鎖され、自治区側への移動が困難になりました。一部のチェックポイント付近では、中央政府側が地雷を敷設した模様です。
中央政府側にあるモスルの街では、アラブ系の住民が自治区側への避難を希望しているものの、境界線を越えられずにいるという情報もあります。避難したくても避難できない状況なのかも知れません。
自治区内の国内避難民
現在、大きな動きとなっているのは、自治区内で避難する人たちです。中央政府側との境界線に近いチャムチャマルやアルビル、ドホークなどから、数千、数万の単位の人たちが、北部や山沿いの村に避難しています。巡回視察を行ったスタッフから情報を総合すると、アルビルやドホーク、チャムチャマルなどの街では、9割以上の住民がすでに町を離れたのではないか、とも考えられます。
比較的、安全ではないかと思われるスレイマニアでも、8割前後の住民が町を離れたのではないか、とも考えられます。
多くの人が女性や子どもたちを避難させたため、街には男性の姿ばかりが目立ちます。また警戒にあたるクルド人勢力の民兵、警察官などの姿も目立ちます。
避難者の状況
「どこどこの村に、多くの人が避難してきた」というような情報も集めながら、実際に確認・調査のためにスタッフを派遣していますが、現在のところ、親せきの家などに身を寄せている避難者が多く、緊急に支援が必要な人は少ないと考えられます。しかし小学校などの公共施設に入る人たちも増え、一部、屋外や車のなかで生活する人もいるようです。
今後、戦争が長引き、電気や水道、医療サービスなどが停止したり、食糧供給が滞ったりするような事態になると、さらに多くの避難民が出るおそれもあります。スタッフは警戒しながら常に情報収集に努めています。
【今後のPWJの支援】
 PWJではすでに、緊急のモバイル医療チームを12チーム編成し、20万人の人口を対象に3カ月間の医療を提供できるだけの医薬品の備蓄を終えています。モバイル医療チームは国内避難民キャンプなどニーズが高い地点に急行し、初期診療や簡単な外科手術を行います。またより高度な治療を必要とする人は都市部の病院に搬送します。病院での治療を可能にするために、自治区政府保健省に対しては100万人の人口を対象に1カ月の医療を継続するための医薬品を提供しました。また国内避難民キャンプでは特に保護が必要とされる人びとを想定し、1700世帯(10200人)を対象に、灯油ストーブや毛布、食器類、テントなどの生活物資を配布する計画です。これらの支援の資金には「ジャパン・プラットフォーム」からの助成金も含まれています。
【寄付のお願い】
ピースウィンズ ・ジャパンでは、イラク危機に際して緊急支援を行うために皆さまのご支援をお願いしています。支援金は以下までお願いします。
* 郵便振替
口座番号 00180-2-628519
口座名  ピースウィンズ  イラク寄付
* 銀行振替
口座番号 三井住友銀行 桜新町支店(普)6669396
口座名  特定非営利活動法人ピースウィンズジャパン イラク寄付
領収証、および報告書を含むピースウィンズ ・ジャパンからのお知らせのご送付を希望される方は、郵便振替をご利用ください。

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