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私たちの活動

「冬服を、靴を、子どもたちに」 ~キャンプの風邪を減らしたい

2月11日から14日まで、クルド人自治区の多くの人たちは「ジャジュン・コルバー」というイスラム教のお祝いを続けました。アルビル郊外にあるバンスラワ国内避難民キャンプでは、ピースウィンズ ・ジャパンが配布した真新しいコートや靴を初めて手にして、喜んだ子どもたちも多かったはずです。そして、この配布事業は、キャンプの風邪を減らしたいという私たちの挑戦でもありました。
バンスラワキャンプで生活する国内避難民は約300世帯。このうち約125世帯はイラン・イラク戦争(1980-88年)で難民としてイランに逃れた人たちで、帰国した後も元の村が破壊されたり、治安が不安定だったりするため戻る場所がなく、20年もの間、難民・避難民として生活しています。その他、イラク中央政府側のキルクーク周辺から移ってきた人たちやアンファル・キャンペーンで家を失った人たちもいます。
ピースウィンズ ・ジャパンは、2002年10月から週5日、バンスラワで無料診療を実施していますが、02年12月ののべ患者数860人のうち、のべ378人が風邪などの呼吸器系疾患でした。風邪はとくに、5歳以下の乳幼児や就学年齢の子どもの間で広がっていました。
風邪流行の背景に、劣悪な住環境や経済状態の問題があります。住民たちはテントや粗末な家で暮らし、子どもたちはマイナス10度の寒さのなか、薄着・はだしで生活していました。
「ソシオ・メディック」(医療を起点とした社会環境の改善)の視点に立ち、風邪をなくすことをめざして、1歳から15歳までの子ども910人に冬服と靴を届けることにしました。子どもは免疫力が強く、温かくして薬を飲み、ゆっくり休めば回復も早いからです。お祝いの時期に合わせ、プレゼントという気持ちも込めました。
配布当日の1月23日、配布場所には、事前に配った受取書と身分証明書を手にした母親や家族たちが、始まる1時間以上も前から詰めかけました。混乱を避けるため、家族の代表者の名前を1人ずつ読み上げ、順番に手渡していきます。自分の順番を待つ真剣な表情を見れば、配給の意味合いが分かります。
受け取った人に話を聞いてみました。
7人の子どもを抱える40歳の母親は「夫も職がなく、子どもに何も買ってやれない。日本の人たちに感謝します」といい、「ジャジュンまでとっておきます」と話していました。キルクークを離れて3年になるそうです。
88年にイランに逃れた、3人の子どもを持つ男性(37歳)は「ここの人はみんな職がない。本当にうれしい。子どもの靴がないので、すぐに渡します」と言っていました。
この男性のような家族も少なくなかったのでしょう。配布直後にも、キャンプでは、さっそくコートや靴を身につけた子どもたちの姿が見えました。
配布後の1月25日から2月20日まで、無料診療を受けたのべ患者数は427人、そのうち呼吸器系疾患はのべ280人でした。単純な比較はできませんが、風邪の減少を示すデータです。冬服と靴の配布もその一因であったと考え、さらに詳しい分析を進めています。

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