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「英語を使う仕事が夢」 父は子どもの教育が心配

生存の恐怖に限らず、生活上の困難に直面したとき、その場から”抜け出す”という決定はだれにとっても重いものです。仕事のことや家族のことなど、考えるべきことがいくつもあるのは、民族や地域が違っても、同じです。
スレイマニアにほど近いキャンプに暮らす国内避難民、ムスタファさん(45歳、仮名)の話を続けます。
ムスタファさんが最も頭を痛めたのは、6人の子どもたちの教育、とくに17歳のファティマさん(仮名)と、15歳のカシム君(仮名)のことでした。
イラク中央政府側の地域にあるキルクークに住んでいたころ、ムスタファさんは彼らが通う学校の先生から「お宅の娘さんと息子さんはとても優秀ですね」とほめられていたそうです。
カシム君が好きだった科目は英語。将来は「通訳かエンジニアになりたい」といいます。ファティマさんはバスケットや走ることの好きなスポーツウーマン。夢は、やはり好きな英語を生かした仕事に就くことで、「お医者さんになりたい」と話します。
「医療を通じて、この社会を支えていきたいの。それに、科学や教育は私たちの社会を変えていくために重要でしょ」
彼らを受け入れてくれる学校はまだみつかりません。自習するための教科書もありません。それでもカシム君は、「お父さんは仕事をなくしてしまったのに、何も助けてあげられない」と気遣います。
ムスタファさんはキャンプのことを、自治区に逃れた人から聞いて知っていました。途中の検問所での取り調べのため、持参できたのは毛布だけでした。
「生活は厳しいし、仕事もできない。でも、ここは安全だと思う。だから満足している」とムスタファさん。 「だれも手助けなんかしてくれないと思っていたのに、多くの人道援助団体の人が来て、手をさしのべてくれる」のが予想外でした。
ムスタファさんは、「キルクークに帰ることばかり考えている」といいます。「キルクークの状況がよくなってほしい。そしたら家に帰る」。カシム君は「友達もいるし、もし帰れなかったらと考えると心配」と打ち明けます。イラク中央政府側の地域を離れ、自治区に移り住むクルド人国内避難民が今もいます。
安全上の理由により、名前・地名などの一部を変更・秘匿しています。

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