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私たちの活動

【アフガニスタン】プロジェクト実施の中で、一番辛いこと

紛争から20年が経過したアフガニスタンの今
 
9.11後のアフガニスタン紛争から数えて20年あまり、長引く紛争や人道アクセスの制限、頻発する自然災害、そこに加わったコロナ禍などにより、アフガニスタンの人々は家族や友人、尊厳ある暮らしなど、多くの大切なものを失ってきました。2021年8月には、タリバン勢力による首都制圧という大きな政変も起こりました。タリバン政権を承認していない国際社会からの支援は滞り、今、人々はますます先行きの見えない不安や社会・経済の混乱の中を必死で生きています。
 
ピースウィンズは2001年よりアフガニスタンで緊急人道・復興・開発支援を行っています。現地の治安悪化を受け、2011年に現地事務所の閉鎖以降も、現地NGOと提携し、必要な支援を現地に届けています。現在は、ナンガルハール県を拠点とする現地NGOのYour Voice Organization (YVO) と提携し、食糧支援を続けています。
※過去の食糧支援関連記事はこちらから
 
YVOスタッフと連絡を取り合う中で、現場を歩き回って直接人々と交流をしている彼らから聞くストーリーは時折あまりに残酷で、思わず涙することも少なくありません。
 
一番辛いのは「対象者を選ばなければいけないこと」
 
事業を実施する中で一番辛いことは何かとYVOスタッフに聞くと、「対象者を選ばざるを得ないこと」だと答えます。調査を行い、出会う人みなが様々な苦しい状況にいることを知りながらも、限られた資金の中で支援対象者、つまり「最も脆弱な世帯」を選ばなければならないからです。恣意的になってはいけないので、国際的な基準を用い、家族の人数や働き手や障害の有無、他の支援を受けているかどうかなど、約一カ月かけて村にある1,000軒以上の家々を訪ね、生活状況を確認し、住民に直接インタビューして必要な情報を集めて困窮度を調査します。
 


パチェラガム郡の風景。高い山の間にも民家が点在しているため、かなりの部分を歩いて回る

 
現在の事業地はナンガルハール県の南部に位置するパチェラガム郡で、山岳部では車が入れない場所にもたくさん民家があります。この辺りは2018年ごろまで、現在権力を握るタリバンだけでなく「イスラム国」やその他の武装勢力が活動していたため、米軍やアフガニスタン政府軍の攻撃が頻発するなど、激しい戦闘地帯でした。戦闘に巻き込まれた家族も多く、公共サービスは皆無に等しいため、困窮度が非常に高い場所です。YVOスタッフは調査のために歩いて地域を巡回していますが、万歩計で2万歩、距離にして16キロをゆうに超える日もあるといいます。一人一人と丁寧に接する精神力や、暑いときも寒いときも山道を歩く体力も求められる難しい仕事です。
 


パチェラガム郡内のとある民家
 
  
「村の通りで子どもたちが乾ききったナン(小麦のパン、現地の主食)を囲んでいた。」とスタッフ
 

小さな子どもが働いて、枝木を集めていました

 
対象者と直接関わるスタッフの声
 
YVOスタッフの一人、イスマイル(Ismail)さんから、調査中のエピソードをいくつか報告してもらいました。以下は、イスマイルさんの言葉を翻訳したものです。
 


YVOのスタッフ、イスマイルさん(写真右)

 
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活動の中で一番辛いのは、調査(支援対象者を決めるプロセス)です。支援団体のスタッフとして村に入っていくと、支援を届けてくれるかもと期待した人たちがいつも集まってきて、「自分を支援してほしい」、と直接懇願してきます。かなりたくさんの人に囲まれる時もあります。今日は、小さな子どもが自分の身分証明書を握りしめて、泣きながら「僕の家に調査に来てください。家に食べ物がなくて、本当に困っています。僕は大きい音が怖い。体や頭の具合がおかしくなっているようです。」と言ってきました。その子も爆弾や銃撃なども体験していて、PTSD(心的外傷後ストレス障がい)の可能性もあります。順番に回るよ、と伝えたのですが、その子は必死で1キロ近くも私たちについて歩いてきました。
 


NGO職員が村に来た、と聞きつけて集まる人々。左手に紙を持ち手袋をしている人がイスマイルさん

 
それから、こんなこともありました。あるご家庭を訪ねた時、入り口に、その家のお母さんの代わりに小さな娘さんが出てきてくれました。その子は、「お母さんが、『助けてくれる人が来たのなら、お姉ちゃんを取り戻したいとお願いしなさい』って。」と言いました。話を聞くと、その子の父親は精神を病み、働くこともできずお金が無くなったため、その子の姉である高校生の娘さんを40万パキスタンルピー(PKR)(約25万円)(※)で嫁に出してしまったのだそうです。パチェラガムのような貧しい地域では子どもを養うことも厳しい家庭が多く、親が家族の生活のために自らの娘を現金のために結婚に出させる家族も少なくありません。そんな話を聞いて、自分も泣けてきました。
(※)アフガニスタンの通貨はアフガニ(AFN)ですが、この地域はパキスタン国境と隣接しており、パキスタンルピー(PKR)も流通しています。
 


 

村での調査(インタビュー)の様子(上記のエピソードとは無関係です)

 
また別の家族は、父親が毒蛇(コブラ)にかまれて亡くなりました。ほかに働き手となる人もおらず、お母さんは精神病を患って、収入もなく、食べるものはいつも足りず、生活に困っていました。さらに、もともともろかったその家の壁がついに崩れ落ちてしまい、小さな子どもたちが、一生懸命、土を盛って壁を作ろうとしていました。写真にシャベルが見えるでしょう?でも・・・こんな小さな子たちには無理です。家に壁さえ足りないのです。野生の犬や動物が怖いと言っていました。
 


左端に壁を作ろうとしたときのシャベルが見えます

 
こんなふうに、話を聞く人ごとに、辛いストーリーがあります。この中から、基準に照らして、支援する人の優先順位を決めなければならないのが、一番辛く、大変なことなのです。
 
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また、村の女性たちと直接話ができるのは主にYVOで働く女性スタッフで、より深く、女性ならではの悩みなども聞いているようです。YVOの女性スタッフ、サルマさんもやはり、地域一帯の困難な状況に非常に心を痛めており、調査の際に、自分の家から古着などを持っていき、厳しい生活をしている世帯で需要があれば置いていくそうです。
 
NGOとしてピースウィンズができること
 
現場からのこういったリアルな声を聴けば聴くほど、行政がしっかりと機能していない場所で私たちNGOが担っている活動の重要性をひしひしと感じます。特に、食糧価格の高騰はアフガニスタンでも顕著に表れており、ほとんどの家で、食糧が十分ではありません。国連等による2022年5月の総合的食料安全保障レベル分類(IPC)の報告によれば、アフガニスタンで2,000万人近くが深刻な食糧危機に陥っているとあり、たった一年前と比べても2倍に急増しています。
 
私たちピースウィンズも、今行っている食糧支援を確実に実施し、これからもより多くの人々に支援を届けられるよう、現場の声の発信や、支援の呼びかけを引き続き行ってまいります。
 


イスマイルさんと子どもたち。この美しい写真の撮影者は、なんと村の子ども。イスマイルさんがスマホを渡して撮り方を説明し、撮影をお願いしたそうです。土壁の家の入口にたたずむ子どもたちの神秘的な瞳が印象的な一枚。

 
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